おまけ

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「俺はさー」 二次会ですこぶる酒を飲んだ零士は、普段なら絶対にできないくせに兄の肩に肘を置いて顔を寄せた。 「てっきり兄貴は女と遊んでて帰りが遅いんだと思ってたんだよー」 「は」 兄はブランデーの入ったコップを煽りながら笑った。 「誰が女と遊んでなかったと言った?」 「え………マジ?」 壱道はわざと肩を竦め、弟が崩れ落ちるのを見下ろした。 「はーい、三次会いきまーす!移動しますよー」 幹事を務める愛華の友達が手を上げ、皆が立ち上がり始めた。 「しっかりしろよ。新郎。これからまだ3次会、4次会。朝まで飲むんだろうが」 そう言いながら自分は襟元を正し、引き出物の袋を手繰り寄せている。 「え、兄貴は帰んの?」 「まあな」 「なんでよー、お兄ちゃーん」 自分よりも細い腕を掴む。 「……酔っ払いが」 睨み落とす壱道の向こう側で例のイケメンが苦笑している。 「3次会は静かに飲むと決めている。俺にも少しは感傷に浸らせろ」 「ええ!そんなあ!」 そう言いながら立ち上がると、壱道は座り込んでいる零士の頭に手を置いた。 「じゃあな」 「…………」 零士はその小さくも逞しい後ろ姿を見上げた。 ―――兄貴……。 兄貴……! 「兄ちゃん!」 ダイニングバーに響き渡った新郎の声に皆が振り返る。 壱道も振り返ると、笑いながら手を挙げ、店を出た。 「――げ。雪降ってる」 続いて出ようとした真木の向こうには、黒い空から白い花びらのような雪が降り始めていた。
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