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 翌朝、姫は御輿に乗って出立する。  良い領地、良い領主ではあったが婚姻を結ぶのは息子の方であり、残念ながら侍女に胆力の無さを指摘される様では自分の婿には無理である。  そもそもお強い母達に蹴飛ばされて可哀想な目に会うに決まっている。  姫は小さなため息を一つ付くと次の目的地に思いを馳せながら沿道沿いに並ぶ民に御輿から手を振った。  出立より一週間経った。  その間最初の貴族の子息を入れて4人に会って見合いを重ねたがどうにも皆、ドングリの背比べであった。  こちらから声をかけると頬を染めて押し黙るか目を潤ませてだらしない顔をするかのどちらかである。  少々気の強い17番目の姫君も流石に之にはゲンナリした。 「これまでに会ったものは皆一様に似たりよったりで、婿殿に迎えるにはちょっとばかし無理なものばかりを集めたのだろうか」  少々疑いを込めて又もや古参の侍女に問う。 「そうでございますねえ、少しばかりどころかちっともお役に立ちそうに無い婿候補ばかりで御座いますわねえ」  金の御髪を梳きながら侍女も困惑顔である。  慣れ親しんだ侍女は17番目の姫の美しい姿を幼少の頃より世話をしてきた為か彼女の美貌に慣れっこだった。  なので何故彼処まで子息達が喋れなくなりぼうっとするのかがわからない。  御輿を担ぐ兵士や護衛達も顔を赤らめて姫の顔をチラチラ見ては溜め息を付いているのに気が付いていない二人である。  他のお付きの侍女たちは気の毒そうに男達を時折横目で見ては、困惑気味な顔をして世にも美しい姫君を間近に見れば仕方もあるまいと肩を竦めた。
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