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 翌朝、御輿にのる前に姫はそっと扇の影から護衛の兵士達の様子をそっと見てみた。  盗人の様な男に言われる通りにするのも(しゃく)(さわ)らぬでもないが、2回も同じことを言いに態々(わざわざ)忍び込むのも何やら訳があるやもしれぬと思ったのである。 「言われてみれば、何やら面妖な様子じゃのう・・・」  道中御輿を担いで来た兵士も護衛達も心ここにあらずといった様子である。  出立の準備で手を動かしてはいるものの、チラチラと座る姫の様子を伺っては、ため息をついたり赤くなったり。  中には、青い顔でソワソワと落ち着きのない者もいるようだ。 「のう? 兵士たちはずっと道中あの様な落ち着きのない様子だったのかえ?」  姫は側に控えていた女官の一人に聞いてみた。 「はい、姫様。道中ずっとあの様な様子でございました。姫君の美しさに当てられた者は皆があの様になりまする」 「・・・皆があれか」 「左様に。姫様の様にお美しい女性はそうそうお目にかかれるものでは御座いません故」  女官は丁寧にお辞儀をする。 「そうか。一月共に過ごしてもあれか・・・」  一月共に過ごして来た屈強な兵士達があれでは、若い見合い相手等ぼうっとしても仕方ないのかもしれないと何やら納得をした姫君である。 「嫁ぐ相手など見つからぬやもしれぬのう・・・」  ため息と共に扇の影で呟いた。  姫の予想通り最後の貴族の子息も今までとなんら変わりはなく、来るだけ無駄であったかと、扇の影でため息をつく結果になった。 「王国の若い者たちも似たりよったりなのだろうか」  湯浴みの後、金の御髪を櫛る古参の侍女に問いかけた。 「そうかもしれませぬ」  侍女も、浮かぬ顔でそう答えた。
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