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騎士達と睨み合いを続けている男達の顔をよくよく見ると、何やら見覚えのある者が混じっている事に姫君は気が付いた。
「あの者達、何処かで見たことがあるような・・・」
遠目に見ている為、見間違いやもしれなぬと考え直すが引っかかる。
次第に両者が緊張してきたようで互いに腰の長物に手を伸ばし始めた。
「難儀よのう」
姫は溜め息を1つつくと、リュートの紐をしっかりくくり直すと、己の背に背負う。
そしてゆっくり音を立てずに馬車の戸を開くと優雅に地面に降り立った。
「双方、長物より手を離せ」
女性と思えぬような、よくよく通る美しくも大きな声で大勢の男達を叱咤した。
騎士たちも、薄汚れた服を着た男達も、その場にそぐわぬ女性の声にギョッとして動きを止める。
「「「「姫! 出てきてはなりません、馬車にお戻り下さいませ」」」」
大勢の護衛騎士達が大慌てで姫の真正面に集まり盾になろうとする。
「ならぬ。この者たちは妾が目的であろう。お前たちはこの帝国の大切な騎士である。だが、そこな者達も同様にこの帝国の民である」
姫の言葉にそこに居並ぶもの達は皆、口をあんぐりと開けて姫を見つめて動きを止めたのである。
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