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さながら熱帯魚を集めるように次々と女性を集める様は、まるで昆虫採集である。
そして世話をするのは後宮の主である皇后なのだ。
もし、自分の収集した女性達に不備があれば皇后の責任となり、皇帝の不興を買ってしまう恐れもある。
その為、集まって来た女性達の教育や礼儀作法、住環境等に嫌々ながらも心を割く御仁であった。
わんさといる後宮の美姫達も様々な個性を有しており、けして皇帝の寵愛だけが目的で集まって来た訳ではない。嫌々ながらも従った者もいれば、貴族の務めとして自ら進んで来たものもいる。
皇后は娘たちを我が娘、姉妹の様に大切にする事で後宮中の美姫の母となったのである。
彼女らも自分達の立場は弁えてはいたが、皇后を母や姉の様に慕っており、世界中探してもこんなにお互い仲の良い後宮は無いのではないかと思わざるを得ない程であった。
その中に放り込まれた小国の姫は流石に皇帝の我儘で祖国迄失ったという身の上も手伝い、後宮の者達全員から憐れまれた。
連れ帰った当日、無理矢理馬に載せられ後ろ手に縛られた姫を見たときに皇后の中の何かがプツリと音を立てて瓦解した。
しかも宮廷医が診察すると、彼女は既に子を身籠っていた。
彼女は既に婚姻済みの姫君であり小国の跡取り娘でもあったのだ。
王配予定の婿は小国を蹂躙されたその夜に既に儚くなっている事を皇后は知っていた。
皇后は宮廷医に診断書を書かせ、気鬱の病と皇帝に伝えると共に彼女を後宮で早々に保護すると宣言し、一切皇帝の手の届かない奥深くに連れ去ってしまったのである。
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