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「さて、どうするよ」 「まずは王国の王に謁見して、伴侶はいらぬと辞退する」 「そうか」 「伴侶は昔から従兄殿と決めておった」 「そ、そうか」 「第一口も聞けぬ男など夫とも思えぬ」 「・・・そうだな」 「此度でよくわかった。妾は従兄殿と運命で結ばれておるのじゃ」 「そうか―」 「神の定めた真実の相手なのだから、その人だけで他は不要じゃ」  ニコリと花が綻ぶように笑う姫君の頬に手を当てると 「じゃあ、行くか。俺が王国には連れて行く。あの国の王はお前の爺さんだからな」 「へ?」 「死んだ王配は王国の一番下の王子だったのさ。だからずっと帝国を許せなかったんだよ。でもな、お前を孫だと言ってしまうと皇帝がどう出るかわからないので公言できなかったんだ。お前の母が懐妊していたことを国王は手紙で知っていたらしい」 「そうか・・・ 私のことを皆が守ってくれていたのだなあ」  姫はポツリと呟いた。  そして鳶色の瞳を見上げると 「従兄殿。名前を教えて貰えぬか? 約束だったろう?」 「ああ。そうだったな。お互いに生きて次に会えたら教えると約束したなぁ」  クスクスと小さく2人で笑い合う。  2人は互いの名前を耳元で囁やくと、王国に向けて大鷲に乗って飛び立ったのであった。
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