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誰もいない、二人きりの時だけは…こうして、弱い私達でいようね。
出来れば何かあっても、頑張って乗り越えて。
家に帰ったら、怖かったね…頑張ったねってお互いを甘やかして過ごしたい。
そしてまた、強い顔をして…玄関を開けよう。
「見たか雫?…みんなスーツ着て入口取り囲んでたの」
「見たよー、お帰りなさいやしっ!って言ったんだよ?…もう、痛いし驚くし…目眩したよ」
「くく、多分父さんだぞあれ。…宮田の親子をビビらせる為に」
「あー、お帰りなさいませってドア開けてエスコートされた…」
宗ちゃんはその夜、指輪をはめた私の肌を唇で愛した。
シャツも脱がずに、ただ唇だけで触れて…まるで誓いを立てるみたいに。
この先何が起こるかなんてわからなかった。
だけど、凄く幸せで静かな夜。
大丈夫だよ、二人で何でも乗り越えられるよって…小さな頃から変わらない宗ちゃんがそこに居て。
私は少しも怖く無くなった。
まだまだこれから、私達は始まったばかり。
ただひとつだけ確かな事は、同じマンションで命が芽生えて…同じ病院で産まれ。
同じ時間を過してひとつずつ乗り越えた今が、これからも続いていくのだと言う事。
何があっても、それだけは変わらずにいたい。
…結局はそれだけ、変わらずに居られればいいと思うのだ。
[完]
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