護られる者

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「…」 「…」 週末のあれは、お父さんから話をするのかな。 そもそも、その報告はお父さんからするのか、それとも私からするのか…。 もともと、宗ちゃんだけで私は行くハズじゃなかった。 きっと宗ちゃん個人の予定は、そこで埋まってる。 うん、言わなくていいよね? 「…今日は、どちらへ?」 「洋服と諸々、買いにいくの」 そうですかと、宗ちゃんは前の車から目をそらさない。 きっちりとした姿勢も、いつもの宗ちゃんの運転姿勢とは違っていて。 宗ちゃんが仕事をしているのだ。神経を張り巡らせてルー厶ミラーで後ろも気にして。 だから私もちゃんと背筋を伸ばす。 「…宗士さん」 「はい」 「私、何色が一番似合いますか?」 きっと、そんな事聞かれると思わなかったんだろう。 ルームミラーで宗ちゃんが私を見た。 「…」 「…」 すぐに前方に視線を移した宗ちゃんは、 「白」 「え?」 「貴女は、白がよくお似合いです」 抑揚を抑えた声。 だけど、胸がきゅっとなった。 初めて行く通りに車が止まる。 先におりた立原さんがサラリと辺りを見渡して後部座席のドアを開けた。 運転席からおりた宗ちゃんもドアを開けてくれる。 「さ、行こう…楽しみね」 女子高生みたいな笑顔に連れられて、大人なデザインの並ぶ店に足を踏み入れる。 1人じゃ気後れする雰囲気に、そっとお母さんの背中に続いた。 「あのね、お母さん」 「うん?」 これも、これも似合うと思うわと、お母さんは何着もパーティドレスを私に当てて。 そのどれも素敵なんだけど。 「私…白を着たいの」 デザインじゃなくて、色を指定した私にお母さんは微笑む。 「そうなの?」 「うん…」 店の前に立つ、立原さんと宗ちゃん。 2人ともシュッとしてて、かっこいい。 「宗ちゃんが、白が似合うって…」 ポソポソと話す私に、お母さんはニッコリ笑った。 「よし!色は決まりね」 決めたのはレースの膝丈のパーティドレス。 首元、デコルテ、7分袖はシースルーだ。 細やかなレースから透ける質感が少しセクシーで。 落ち着いたシルバーのハイヒールと、白いトゥヒールでお母さんは悩んで。 そうだ、とイタズラを思いついたみたいな顔をした。 「?」 「雫、ドレスもう一回試着してきて」 「…え?」 早く早くと急かされて、試着室に放り込まれて。 何で二度もと思いながらそれに袖を通す。 カーテンを開けた私の腕を取ったお母さん引っ張って行った先は、店のガラス張りの窓の内側。 その窓を隔てた先に立つ、宗ちゃんの前だった。
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