872人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
エレベーターに乗り込むと、宗ちゃんは私の少し前に立った。
まるで盾になるみたいだ。
私はそっと一歩後ろに下がる。
お父さん譲りの少し茶色の髪と、柔らかな茶色の瞳はもう隣から見下ろしたりしないんだ。
宗ちゃんは後部座席のドアを開けて、私が乗り込んだら一度周りを見渡して運転席に座った。
「どの辺りに?」
「表参道に」
いつもは行かない所だけど、毎日この服でいる訳には行かないから。
宗ちゃんが黙って車を出す。
窓の外を眺めながら、私は一言も話さずに過ごした。
相手が宗ちゃんじゃなかったらきっとそうするから。
幼馴染でも、友達でも無い。
何度もそう言い聞かせていた。
最初のコメントを投稿しよう!