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これからも、ずっと。
宗ちゃんは頭を上げた後、私に帰ろうと言った。
「大丈夫だよ、誰かに送ってもらう…宗ちゃんお父さんから頼まれたんでしょ?」
「いや、電話で済む…俺が連れて帰る」
自分が居ない時に起きた事件。
宗ちゃんは譲らない瞳で私を見ていた。
「雫さん、大丈夫ですよ…時間を置いて明日連絡する方がいいんです…向こうも、彼女の処分を考える時間がいるでしょう」
村沢さんがそう言って、私は宗ちゃんに肩を支えられて部屋をでた。
廊下には椎野さんが立っていた。
宗ちゃんの姿を見た椎野さんは、冷たい床に両手をついた。
「申し訳ありませんでした」
「し、椎野さん、そんなっ!」
止めようとした私を宗ちゃんが肩を抱いて下がらせる。
え?何で?
「今回の事は、場所が場所です…仕方の無い部分もあります」
宗ちゃんの声が、ゆっくりと紡がれる。
「ですが、雫さんを無事にここまで連れて帰ってもらわなければいけなかった…」
「はい、申し訳ありません」
今でも、宗ちゃんは椎野さんを慕っている。
兄弟みたいに、ココ最近も並んでコーヒーをのんで楽しそうに話しているのも見て来た。
これは、必要な事なのだと思った。
「雫さんの、直属の護衛を外れていただきます」
「はい」
椎野さんの返事を聞いた宗ちゃんは、椎野さんを立たせる事もせずに通り過ぎた。
そのまま、入り口に雑に止められていた車に私を乗せた宗ちゃんは一言も話さずに走りだした。
「…宗ちゃん、ごめんなさい」
「いや…俺が一緒なら、多分気付いた…傍にいなくてごめん」
真っ直ぐ前を見て、硬い声で宗ちゃんは運転していて。
「…ああ言わなきゃいけなかったけど…俺は椎野さんほど信用出来る護衛は知らないから…しばらくしたら、また戻ってもらう」
「…うん」
真っ直ぐマンションに帰って、宗ちゃんは私の肩を抱いて部屋まで離さなかった。
靴を脱がして、私を抱き上げて宗ちゃんはバスルームに移動した。
シャツと、破けたスカートをゆっくり脱がされる。
恥ずかしいなんて考えたら申し訳ない様な手つきだった。
宗ちゃんに脱がされて、自分で見た身体は酷い事になっていた。
襟元はシャツで擦った赤い筋が太く入っていたし、ピンヒールで蹴られた太ももは何ヶ所も青くなって熱を持って腫れていて。
腰骨の辺りは血が滲んで、皮がめくれていた。
宗ちゃんは、ぬるま湯でそっと私の身体を流してボディソープは使わなかった。
一言も話さずに、ただ黙々と身体を流して。
バスタオルで優しく水分を拭き取って私を抱き締めた。
「痛かったな…ごめん」
「宗ちゃんのせいじゃないよ、電話で焚き付けたみたいになっちゃったし…私も考えが甘かったの」
新しいバスタオルで私を包むと、抱き上げてベットまで運んで寝かせる。
「…雫…俺さ…今日立原さんに付き合って貰って…買い物行ってたんだ」
「…そうなの?珍しいね」
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