24 終章 青陽の空へ

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うなずいてたくましい首に両手を回すと、鬼猿は満足げにユナを抱きかかえた。ふわり、(ちゆう)に身体を()かせる。背中の外衣が翼のようにはためく。  (いち)(じん)の風がふいた。春を()げる強東風(つよごち)。生まれ育った森がどんどん小さく遠くなっていく。ユナはまばたきする。まさか自分が森を去るなんて。  こんな日がくるなんて思いもしなかった。()(しよう)にさびしくはあるけれど、今はそれより夢の中にいるみたいだ。  空を飛ぶ。なんて(そう)(かい)な感覚だろう。  心を(おど)らせていると、(まぼろし)のように耳元で(ささや)かれた。 「ユナ。あんたはこんな俺をうけいれて、身を(てい)して(すく)ってくれた。これから一生、大切にするよ。……ありがとうな」  闘鬼は気にいった者を力づくで(さら)って(すみ)()につれ帰り、これを(むさぼ)り食うという。  (あく)(みよう)高いその世評のまま、ユナもまさに今つれ去られようとしている。  けれどこの青陽(せいよう)にはてない未来を得た胸はときめき、今まで(むか)えたどの春よりもうれしく身軽だった。
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