水の下、砂の中

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 公民館から駅まで教授の車で送ってもらい、そこから電車で帰るのが実地調査中のルートだ。渚とは一駅違いなので期間中は一緒に帰っている。  駅のホームに着いたらちょうど電車が来たのでそのまま乗ることが出来た。車内は閑散としており、ほとんど貸切状態だった。 「思ってたより潤は静かだったね。」  渚は重い荷物を下ろし、席に座ったところでこちらを伺いながら言った。 「何が?」 「潜った時にもっと興奮するのかと思ってた。」 「あぁ、まぁそうだね。私ももっとグッとくると思ってた。けど案外呆気ないというか、そんなにでもなかった。」 「ふふ。潤はクールだからね。」 「はいはい…。渚はどうだったの?潜ってみて。」 「気持ち良かったよー。やっぱり夏は水の中に限るね~。」 「ブレないね、あんたは。」  相変わらず渚は楽しそうに笑っている。 「ただ。」 「うん?」 「臭いのは嫌なポイントだね。これがなければ最高だったよ。」 「あぁ、確かにそうだね。」  すんすんと自分の腕を嗅ぎながら、「まだ匂う気がする」と真剣な顔をして話す姿は可笑しかったけど、なんだか渚らしいなと思った。 「悪いね、付き合わせちゃって。」 「いいよ。お昼は奢ってくれるんでしょ?」 「それはもう仰せのままに。」 「ならよし。」  腕を組み、鼻からふんすと息を出す姿は全身で満足感を表現していた。渚とは大学からの付き合いだけど、出会った時から気が合った。どちらもマイペースなところがあるが、そのペースが同じなのか一緒にいて気が楽なのだ。 「にしても疲れたね~。普通に潜るのとはやっぱり違う。緊張感もあったし。」 「あんたも緊張するんだ。」 「するよ!私を何だと思ってるの?」 「うーん…。芸人?」 「おぉ…。それは誉め言葉?」 「多分。」 「ではありがたく受け取りましょう!」  それから暫くくだらない話をしていたけど、疲れがドッときてしまったのかいつの間にか寝てしまった。   …間もなく…駅、…駅  朧気な意識の中、降りるのは次の駅だなと考えているとふと左肩に重さを感じた。見てみると渚が肩に寄りかかって寝ていた。どうやら二人とも眠ってしまったらしい。すぅすぅと寝息を立てている姿をぼーっと見ていると、電車がブレーキをかけ始め、体が傾いた。その瞬間ハッと意識が覚醒し気が付いた。ここが渚の降りる駅だ。 「ちょっと渚!起きないと!寝過ごすよ!」 「んあぁ?」 「んあじゃないよ。降りないと!」  完全に寝ぼけている渚に荷物を持たせて、ちょうど開いたドアから叩き出した。ホームに降りた後も何だか寝ぼけているようだったけど大丈夫だろうか?
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