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次の駅に着いたところで渚からおはようの連絡が来た。どうやらちゃんと起きたらしい。こちらも駅に着いたことを伝え、家に着くまで寝ないようにと送った。私もさっさと家に帰ろう。大学から一人暮らしを始めたアパートは駅から徒歩5分の距離だ。アパートに着き、部屋に入り、荷物を下ろし、道具のケアや片付けをしてようやく一息ついた。一息ついたがまだやることは残っている。携帯を取り出し、電話を掛けた。
「…あ、もしもし母さん?」
「はいはいお母さんですよ。今日の授業はもう終わり?」
「うん。さっき帰ってきたとこ。」
「それはお疲れ様。で、どうだったの?チヨばあの故郷は。」
「あー何もなかった。」
「ふーん。まぁそうよね。もう60年も前に沈んだ村だものね。なにもないわよねぇ。」
「ただ、明日は建物の基礎を掘り起こすから、その時に何か感じるかもねって教授が言ってたけどね。」
「はぁ。考古学っぽいことするのね。」
「そりゃあ考古学を学んでいるんですから。」
ふふふ。と上品な笑い声が聞こえてきた。我が母親ながら慎ましい笑い声だ。
「そうだったわね。何にせよ怪我と事故には気を付けるのよ。何事も体あってのことなんだから。」
「分かってるよ。安全講習はしっかり受けてるし、現地でも一人では行動しないし。ちゃんと気を付けてるよ。」
「ならよし。」
「ん?」
「うん?どうかしたの?」
「いや、何でもない。」
「そう?ならいいんだけど。」
「それよりも授業も終盤だし、これが終わったらそっちに帰るから用意よろしく。」
「はいはい。寝床をキレイにして待ってますよ。」
「よぉしくぅ。」
欠伸混じりに話した所為でふにゃふにゃな声が出てしまった。早くベットで横になりたい。
「じゃあ今日はもう疲れたから切るね。」
「ちゃんとご飯食べるのよ?お風呂も入ってね?」
「分かってますよ、お母様。良い子にします。」
「もう。しっかりね?」
「はいはい。」
「また明日。」と言って通話を切った。その後はシャワーを浴びて、適当に夕飯を食べ、ストレッチをして過ごした。ストレッチをしている最中から眠気がどんどん襲ってきたので、早々に降参し、布団に潜った。寝るには少し時間が早いけど明日も朝が早いから、と謎の言い訳を考えていると数秒も経たずに眠りについた。
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