11人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
ウルル 2
現在、午前11時10分。集合時間は11時だけど、わざと遅刻しようと思ったんだ。イジメに対する私なりのちょっとした反抗。だけど、集合場所に近付くにつれて心臓がバクバクと騒ぎだした。やっぱり、根性無しの私は、この程度の事でもビビっている。怒られるんじゃないか……。イジメの標的が私になるんじゃないか……と。
集合場所は学校裏。私達の高校は低い山の頂上付近に建っている為、校舎から死角になる裏山の場所があり、昔から度々そこへエレネとオトノを呼びつけていた。
学校内には入らず、校門前を横切って迂回するように裏山へ向かう。運動場からは、野球部がボールを打っているであろう金属音や他の部活動の声が聞こえてくる。
私は、いつの間にか駆け足になっていた。遅刻しているのに、ゆっくり歩いていると文句を言われそうで怖くなった為だ。
その時、1人の女性が斜め前から現れた。私は彼女と目が合い、その現実を理解する事に時間を要した。彼女は東京にいるからと断ったエレネだったのだ。
「エレ……」
私は彼女へ声を掛けようとして途中で止めた。それは、エレネの雰囲気が少し違っていたというのが1番かも知れない。
エレネは、アカナやイミリに反抗する態度を見せなかったから、気の弱いイメージを持っていたのに、今日は殺気立っているというか、彼女の視線に少しビビってしまった。イジメられっ子にもビビる自分のチキンさが情けない。
声を掛けるのを止めたもう1つの理由は、自分がエレネの立場だったら、と頭の中で考えが色々と駆け巡ったからだ。東京にいるとわざわざ嘘をついたのに、ここに来た理由は何だろうか? オトノが心配で確認しに来たのだろうか? もしかして、助けようと考えたけど、やっぱり怖くなって逃げたのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!