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「そんな状態だから勿論病院なんて行ってなくて、部屋で産んじゃったのよ」
「部屋で?」「一人で?」
僕と笠原さんは同時に声をあげた。
「そう。でも役所に手続きしなきゃ赤ちゃんこの社会に存在しない子になっちゃうじゃない?だから私やその当時住んでた人達でどうにか手続きだけはしたのよ…母子手帳もないから本当に大変だった」
相羽さんは大きな溜息をついた。
「でもねぇ…幸子ちゃん産後の肥立が悪くてね…。色々無理してたんだろうね…亡くなっちゃったのよ…」
「え…」
僕の心臓が急に速く動き出す。
「それじゃあ、あの電話って…。僕が一瞬見た女の人って…」
「谷川くん…あの電話、そもそも電話線繋がってないからね?」
笠原さんの言葉に僕の視界は白くぼやけていく。
「いや〜本当よ。冗談で言ったのに本当に電話鳴るなんてねぇ?」
相羽さんの言葉で僕の視界は真っ黒になった。
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