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「原さんちょっといい?」
201号室のドアを叩くと奥から物音が聞こえた。ギィーと軋む音を立ててドアが開くと共に目迄染みるような酷い悪臭で思わず鼻と口を手で覆った。
原さんと言う男の髪は真っ白で覇気のない目、襟元が伸びきったTシャツ、シミだらけのスエットパンツ姿、明らかに社会から孤立した人物だと察した。
「あのさぁ…この男の子ね、この間台所の電話で幸子さんと話したんだって、それから時々幸子さん見えるらしいんだ」
不動産屋がそう言って僕を前へと押し出すと、今まで虚ろだった原さんの目が大きく見開いた。
「あいつと?君が?」
そう言うと僕の二の腕を力強く掴んだ。
「助けてくれよ!俺もう耐えられないんだ!」
原さんの手はそのまま滑り落ち床に泣き崩れた。
崩れた原さんの背後から見える部屋の窓の前には幸子さんが立っていた。
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