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「ちょっとまて!俺を呼んだって?ふざけるなよ…ラッキーな仕事にありつけたと思ったんだ。住人が寝静まった頃に水回りとか簡単な掃除をするだけで、住居付き、しかも電気代水道代無しで月に6万入るんだからな。あいつの思い通り俺がきたならもう気が済んだだろ…出てくるなよ…」
原さんは拳を自分の腿に叩きつけ大粒の涙を流した。
「原さん…何故幸子さんの事をずっと『あいつ』と呼んでいるんですか?『幸子』と名前で呼ばないんです?」
僕がそう言うと
「物だったからよ。私そういう男沢山見てきた…。俺の物だから俺の言う事だけ聞いていればいい。口答えしたら暴力振るって怖がらせて、後で甘い声で優しくするの。優しくて寂しい子程こういう男の餌食になるのよ」
相羽さんが悔しそうに爪を噛んだ。
結局赤ちゃんも警察が児童相談所に託しその後の行方は分からないらしい。
乳児園に行ったのか…、その兄弟が引き取ったのか…。
僕はこの時間ずっと怯えていた。
あの公衆電話が鳴る事を…。
でもあのリリリリィンと言う音を聞く事はなかった。
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