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そして何も解決する事なく季節は冬へと変わっていった。
冬になると坂道荘は巨大冷蔵庫と化し、僕は常に古着屋で買ったベンチコートを着て、湯たんぽと唐辛子入りの靴下を履き寒さをしのいだ。
相変わらず幸子さんの姿は見える。
「谷川くんお正月は実家に帰る?」
半纏姿の相羽さんが小鍋でお湯を沸かしながら聞いた。
「はい、お正月はバイト先も休みだし深夜バスのチケット取れたんで父の顔を見に行こうと思います」
僕の言葉に相羽さんは目尻を下げた。
「本当に谷川くんいい子!私のは寂しいけど…。笠原くんも帰るみたいだし、あぁ〜あの男と年越すなんて…」
と言うと「オェ〜」と舌を出した。
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