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元旦の夜、父は僕と一緒に深夜バスにのり坂道荘へと向かった。 坂道荘に着くと台所で相羽さんと不動産屋が仲良雑煮を食べていた。 父はその2人に深々と頭を下げ「いつも息子がお世話になっております」と挨拶をした。 そして2階に行くと何故か幸子さんが住んでいた203号室の前に立ち手を合わせた。 父は幸子さんと知り合いなのか…? そして201号室のドアを叩いた。 「すみません、谷川大和の父です息子がお世話になっております。ご挨拶させて下さい」 物音がしてドアが開いた瞬間…。 父は原さんの胸ぐらを掴んだ。 「お前か!お前が幸子をボロボロにして殺したんだな!妹をあんな風にしやがって!」 父は原さんの頬を勢いよくぶん殴り、その勢いで倒れた原さんにまたがると目を充血させながら「お前だけは許さねぇ」と言いなが殴り続けた。 僕は状況が把握出来ずにその場に立ち尽くし、騒動に気付いた不動産屋と相羽さんが父を止めに入った。 どう言う事だ? 妹だと? じゃあ幸子さんが産んだ子って僕なのか? あのクソみたいな男が僕の父親なのか? あいつの血が僕の中に流れているのか? 「うえっ」 酷い吐き気に襲われて僕は慌ててトイレに駆け込んだ。 昨夜食べたすき焼きが僕から吐き出ていくと同時に偽りの親子だったのだと言われている気がした。 胃の中身を全て出しても気持ちの悪さは治らない。身体中であの男が父親と言う事を拒んでいる様だ。でも僕の血は入れ替わる事などできない。 今まで父と信じていたのは叔父だった…。
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