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リリリリィン リリリリィン
ピンクの公衆電話の音が鳴り響く。
その音で皆の動きが止まると、街灯に集まる蛾の様に電話へと引き寄せられていき、何をする訳でもなくただ鳴り止まない電話を皆で見つめている。
誰が出るべきなのか…。
幸子さんは誰を呼んでいるのか…。
その時、原さんがフラフラと電話に近づき受話器を取った。
『私の赤ちゃん…たかしと私の赤ちゃん…たかし似の赤ちゃん…やっと会わせられた…』
受話器から聞こえている筈の声がスピーカーの様に坂道荘に響き渡っていた。
『クックックッ…』
押し殺した様な笑い声に冷たい空気が渦を巻いていく。
『ほうら、これで私たちに絆ができた…』
電話はブツリと切れた。
その途端原さんはその場に倒れた。
いや…倒れたのではなく白い泡を吹いて死んでいた。
幸子さんが連れて行ったのだとその場の誰もが思った。
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