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「一応見てから決めてね。後からクレームとか面倒臭いから」
そう言われてそのアパートに連れて行かれた。
そこは最寄りの駅から小さな商店街を抜け、昔ながらの住宅街を通り細い路地を抜けて現れた長い坂道の途中にあった。
いつから建っているのだろうか?木造2階建のアパートの入り口にある半分腐っていそうな大きな表札に書かれている『坂道荘』という文字が消えかかっていた。
「ここ玄関ね。下宿みたいな作りだから、靴をここで脱いで下駄箱に入れるか部屋に持っていってね。空いてる部屋は204号室だから、この階段登って」
不動産屋のおじさんが説明をしながら階段を登るとギィギィと酷く軋んだ音がした。
「こんなに古いけど、2階の201号室、202号室、1階は101号室に住んでる人いるから。台所とシャワーは1階ね」
204号室のドアを開けるとまず部屋の磨りガラスの窓が見えた。古びた畳が4枚収まっている部屋は収納出来る押し入れなどなく、スッキリしていて外観よりずっと綺麗な感じがした。
「凄くいいです」
僕のテンションは上がっていた。
「いつから入れますか?」
僕が聞くと不動産屋さんは書類を出してまた頭をかいた。
「印鑑ある?あるなら今日からいいよ、電気は各自、水道代は折半だから文句言わないでね」
「え…本当ですか?あります!」
僕は不動産屋が出した書類に『谷川大和』と記入して判を押した。
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