坂道荘

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その日は灯りもない真っ暗な部屋でリュックを枕に薄手のダウンを掛け布団かわりにして寝た。 何も持っていなかったが、これからの生活に期待で胸がいっぱいだった。 坂道荘の生活は思っていたより快適だった。201号室の人とは全く会う事は無かったが、202号室の大学院生の笠原さんと101号室の相羽さんというお婆さんはとても親切に接してくれた。 ただ水道代は折半だからシャワーは5分以内だったり、1日2リットル迄という決まり事は中々厳しかったが…。 あと台所の入り口にピンク色の公衆電話が置いてあった。 携帯電話がまだ無かった時代に使われていたものらしく、今は電話線も繋がれていない。 「その電話はたまに鳴るからね」と101号室の相羽さんが不気味な笑みを浮かべたので、僕は完全にその電話にビビっていた。 そんな僕を見かねた202号室の笠原さんは「そんなのは作り話だよ、僕は5年間住んでるけど鳴ったのを1度も聞いた事ないんだから」と笑いながら肩をポンと叩いて安心させてくれた。
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