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その音を聞いた瞬間、僕の心臓は止まった。
灼熱の坂道荘で溶け始めているあずきバーを持ちながら僕の背筋だけは凍っていく。
リリリリィン リリリリィン
中々鳴り止まない電話の音を聞きながら、催眠術でもかけられたかのように僕の意識は朦朧となり、無意識に右手はピンク色の受話器を取っていた。
受話器の向こうから女の人の泣き声が聞こえ、僕は唾をゴクリと飲み込んだ。
『ねぇ、たかしを呼んで来てよぅ。今すぐにたかしを呼んで来てよぅ。赤ちゃんが…赤ちゃんが産まれちゃう…』
高くて少しハスキーなか細い声は消えそうな程小さくて僕は必死に受話器を耳に押し当てる。すると今度は「うっうう〜」苦しそうな呻き声に変わった。
「大丈夫ですか?何処にいるんですか?」
僕は咄嗟に応答してしまった。
『さ…坂道荘…』
そして、ブツリと電話が切れた。
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