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幸子
「え?電話取っちゃったの?」
笠原さんが引きつった表情になる。
「はい…」
「で、女だったんだね?」
相羽さんが真剣な眼差しで僕を覗き込んだ。
「はい…。たかしを呼んでって…、赤ちゃんが産まれるって…。で、その後キャミソールにミニスカート姿の細い女の人が立っていて…」
そう伝えると相羽さんが「ヒィ」と声をあげて口元を手で抑えた。
「それ幸子ちゃんじゃない?」
「幸子?」
僕と笠原さんが同時に聞き返す。
「そう、203号室に住んでたのよ20年位前かなぁ…。ここに来た時にはもう妊娠してて、それに顔にも大きなアザがあって…どうやら男が暴力振るう奴だったみたいでさ。まだ10代位だったと思うのよ?でも両親はもう死んじゃってて身内もお兄さんだったか、お姉さんだったか…兎に角ほぼ身寄りがない状態だった訳。お金も持って無くてさぁ、多分よ?多分お腹が目立って妊婦ってバレるまで身体売ってたんじゃないかな…」
相羽さんの話に僕も笠原さんも言葉が出なかった。
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