僕はドラえもんを卒業します

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 卒業証書授与、高校一年生の頃の音喜多子平殿。  毎週欠かさずにアニメ・ドラえもんを視聴する習慣を修了したことをここに賞する。  貴殿は四歳の頃から毎週欠かさずにドラえもんを視聴していたが、藤子・F・不二雄先生が亡くなり八年、巨匠を失いタケコプターやどこでもドアのような奇想天外でありながらも夢のある秘密道具のアイデアを生み出し続けることは一介のアニメスタッフには荷が重かったようで、年々秘密道具のクオリティが下がって行きました。  それでも在りし日のドラえもんがいつか帰ってくると信じ、中三で高校受験が控えているのにも関わらず、毎週テレビを見ていました。  しかし二〇〇四年四月、ドラえもんが野菜のナスに木の棒を刺しただけの『ボーなす』という秘密道具を出した途端、ああ、僕の好きなドラえもんはもういないんだと悟り、卒業を決意しました。  時が流れ、一昨年の三月には息子も生まれました。今度はその息子がドラえもんを卒業するまでドラえもんのようなあたたかい目で見守っていてあげてください。  そしてこれを機に、声優が大山のぶ代から水田わさびに変わったという事もいい加減に認めなさい。  卒業、おめでとう。
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