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縁起
翌朝は、何処かの寺の僧侶が、沢山の塩結びを持って表れた。本来なら、勧進元の住職も来る予定だったが輿の数が足りず寺で待っているとのこと…そう話して居たのが聞こえる。あのお役人が何故成田屋と知り合いなのか?…腹を満たせば、興味の方が勝つ…けれど、肝心のお役人はもう用が済んだのか?現れず…先頭に立って忙しく働く僧侶に聞く訳事もままならないので、
「お役人の話じゃ…俺は始めの失敗作品…歌舞伎役者に成らなければ、この隠居の心の中じゃ全部失敗なんだとさ…お役人も、きっとそのくちなんだろうな?あの男は、成田屋さんに取り入ろうとして失敗したって事だが?やり方が逆さまだ。あのお役人はそんな事が嫌いなんだよ。這い上がるなら、別の方法を考えないといけないのさ、そういう事なんだろうな?」
人の良さそうな担ぎ手の一人に話をして見たら、そんな事を言われた。
「その時は、その意味がさっぱりわかりませんでしたが?何故か皆、揃いも揃って刺青がある事と、関係あるのでは?そう勝手に思ったのです。話をしてくれた方にも、背中一面に火炎が彫ってありました。」
食う心配をしなくて良くなり、火災跡に興味が出て来た。根掘り葉掘り情報を集めてみる。
「止せよ、ろくな話じゃねぇぞ…。あまり関わらない事だ。」
途端に態度が変わる。それでも根気よく聞いて見る。火災跡は、隠居として無理矢理旦那を閉じ込めた場所だった。
「よく留の奴は、ご飯をくれるって言ってたよ?何か条件はあったけど…教えてはくれなかったな?大勢居るとご飯を貰え無いらしいんだ。」
その場所が、此処じゃ無いかと思った。豪快に否定され、別の事を教えてもらった。
「お前はその留めっていう小僧がどうなったか知っているのか?芝居小屋に忍び込んで袋叩きにあったんだよ!お役人はその留めから、ここを聞いたんだよ!相当酷い目にあわされたようだぜ?あの男はそれに関わってくれて命拾いしたのさ…。」
その不思議な言葉を…犯罪者となった時、まざまざと思い出してしまいました。そう僧侶は言って、初めて料理に手をつけたのだった。
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