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災厄
一番の災厄とは、何だろうか?火付けの疑いをかけられる事?それとも守る筈の親が火災で亡くなってしまった事?気がつけば吸い込まれる様に其処に居た。
「何してる?!」
役人の恫喝は自分じゃなかった。逃げなきゃならない相手は、役人だけじゃ無い…迷子を売って儲ける大人にも用心しなくちゃなならない、焼け跡にはそんな手合いがざらに居た。
「先代ご贔屓の御宅と伺ったんで、誰か残っていたなら、ご挨拶しなければと足を運んだ迄でございますが?如何致しました?お役人?」
役人の目的が、後片付けと称してめぼしい品を黒鍬から、取り上げようの魂胆が透かし彫り何て、勝手に思っていたけど…。
「贔屓だと?どちらの話を言って居るのだ?まさかどちらも先代の贔屓だったとでも…。」
小判鮫宜しく回りを游いで居る男が、滑るように財布を役人の懐に…入れようとした。
「どちらも、先代成田屋のご贔屓には違いありませんから、借りて居たものを返しに来たのは本当何ですよ…。しかしこれが、なかなか謎でございましてね?ここは一つお役人、知恵を貸して頂けませんか?お土産物は、そいつと言う事じゃいけませんかね?他にも色々用意はございますけど…側に罪人何か置くなとの親からの遺言何でこいつで収めて頂きたいのですが?」
役人の知り合い?成田屋って!?びっくりして俺は逃げる事を忘れた。成田屋は役人に笑いかけ、役人は返す笑顔のまま男の手を捻り上げる。
「てめえ…騙しやがったな!?俺があの事を喋ったら…痛い痛い!勘弁してくれ!」
小判鮫男だけが、財布を落として喚き散らす。成田屋と呼ばれた者が、ゆっくり財布を拾うと…役人が男に痛恨の一言を加えた。
「成田屋のご贔屓を、犯罪者にしてはいけないんだよ…。お前さんはその辺を間違ってしまったんだな?俺の用事はこいつにゃねぇし…だが、なにかと便利にはちがいない。こいつは叩きがいがありそうだ。有り難くもらっておくよ。何か利用する事は出来るだろう?欲しい奴がいたら、まあ、くれるとするかな?おい!連れて行け!」
待ち構えて居た岡っ引きに引き渡され、縄付きとなって引っ立てられた。
「此処から先は浮浪児ども!お前達の出番だとよ!成田屋さんが用事だそうだ。今は無下に捕まえたりしないから、何とか出て来てくれねーかな?俺はその為の見張りなんだよ!」
逃げたら、捕まってしまうんだと思って、素直に顔を出した。役人の用事は確かに別にあった。
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