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目覚めると、私は彼のパジャマの裾をぐっしょりと濡らして泣いていた。彼は「悲しいな。寂しいな」と言って背中をとんとんしてくれた。
私は彼の腕にしがみついて子供みたいにわんわん泣いた。何分だって、何時間だって、そうしている私を、彼は離そうとはしなかった。
そうして父の死をしばらく受け入れることができず、ふさぎ込んでいた私との別れを彼は半年待った。私が落ち着くまで。
最初の別れ話のとき「別に好きな人ができたとか、そういうわけじゃないよ」と彼は言った。でも、私とは合わないのだと、何か小さなズレみたいなものがあって、それに耐えることは今はできているかもしれないけれど、未来まではきっと難しいと思うんだ、と言った。彼の言葉はひどく抽象的に思えて、けれど一方で現実的な難しさを正直に語っていた。
けれど、私は知っていた。本当は好きな人ができたからだったとしても、「好きな人ができたから別れてほしい」とその通りに相手に言わないこともあることを。
別れ際とはそういうもので、私も過去に同じことを付き合っていた別の相手にしたことがあるからだ。それがどんなに不義理なことだとわかっていても、言いたくない。言えない。相手に恨まれずに、次の恋路の希望も失いたくない、そんなずるい思いが見え隠れするから、言えない。
そんなものだとわかっている。
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