雨にはる

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 ああ、降り出した。  文字通り大きくため息をついた私の横で、ソファに座った彼は「お腹すいたな」と的外れなことを言った。  天気予報は外れ、三月の嵐のような雨に見舞われた午後二時。昼なのに真っ黒な空は、春の訪れを(いち)ミリたりとも感じさせないほどに冷たい顔をしていた。まるで、今日が私たちの別れの日だと知っていたかのように――。  私が出かけているうちに出ていってくれたほうがずっと気が楽なので、当初から、今日は友達と出かけると決めていた。けれどもこの雨で、ピクニックの予定は流れ、おまけに友達の自宅の二階が雨漏りしたとかで会うどころではなくなった。ならば、一人でどうしようかと考えあぐねている間にお昼の時間になってしまった。 「お腹すいたし、そろそろ行くね」  身軽にリュック一つ抱えた彼がそう言いながら、腰を上げる。  付き合い始めた頃、一緒に出かけたアウトレットで買ったスポーツブランドのもの。四年間一緒に住んだのに、お金を出し合って買った共有の家具はほとんどがこの部屋に残された。
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