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「まだまだ、元気だと思っていたのにな…」
祖母の事を知っていた人達の表情が沈んでいくのを、私はただ見ているだけしか出来なかった。
「あいよ! 肉じゃが定食2丁! お待ちどうさま。」
そんな空気を払うような清清しい声と共に、美味しそうな匂いを放つ料理が、私の目の前に置かれた。
「あっ、ありがとうございます。」
さっきまでの重い空気が一気に軽くなり、私は店主さんへと笑みを返していました。
もう、見ただけで判る。絶対に美味しいやつです。
ゴロゴロの大きいジャガイモは艶のある狐色に。溶けそうな玉葱。脂身がしっかり残っているお肉。人参もコンニャクも丁寧に角を落としてある。飾りのさやえんどうにも味が染みていそうだった。
艶々のお米に。真っ白いお味噌汁には、なめこがコロコロと浮いている。
漬物は桃色と白色の紅白色。
私は自分の状況を忘れて、白い人が早く一口を食べてくれないかと待っていた。
「それでは、頂きましょう。」
「はい。いただきます。」
私は白い人が白米を口に運ぶのを見届けてから、丁寧にじゃがいもを箸で掴んで、一口に掘り込んだ。
あっ…お祖母ちゃんの作ってくれた味に似ている…
はぁあああ……美味しいぃ~
そこからは、あっという間で、無心で目の前の料理を平らげていた。
祖母の事を想ってくれたお客さん達を忘れるほどの美味しさでした。
食べ終わってから、少し恥ずかしくなるほどの…
「ごちそうさまでした。凄く美味しかったです。」
白い人に会釈する程度に頭を下げて、ほうじ茶で美味しさの余韻に浸る。
「露払いについて説明させてもらうね。」
私は、一息呼吸を整えて「はい。」と答えた。
「露払いは、言葉通り露を払うことです。ある特別な場所の露を切り払い事を指します。」
何かよくわからないけど、儀式的な作業をするということなのだろう。
「それを行える人は特別な力を持った現世の者だけで、毎年雨の季節に来て『露払い』をして下さいます。そして最初の年だけ、一つ願いを叶えて差し上げます。」
え?! 願いを一つ叶える?
私はその言葉に、息が止まり、胸が熱くなった。
私の動揺を置いたまま、白い人の話は続いて行く。
「もう、お解かりだと思いますが、月子さんにその露払いをして貰っていたのですよ。」
祖母がそんな事をしていたなんて……だけど、それが真実だと思える記憶があった。
祖母は梅雨の時期になると、私を家に置いて出掛けていたのだ。
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