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けども。いまのわたしは、死ぬ勇気さえも出ない。痛いのが怖いから。楽に、簡単に、痛みもなく死ねる方法があるのなら、とっくに実行している。怖いのは、家族に迷惑をかけること。電車に飛び込んで死ぬと後処理が大変だし、電車の運行会社から多額の請求をされるとか――聞いたことがある。
四大まで出させて貰って行きつく末路がこれかよと。憐れみの笑みすら出やしない。仕事以外で――誰かと話したのはいつが最後だったろう。思い出せないくらいに昔だ。最近では、スーパーやコンビニでさえも言葉を交わさずとも買うことは可能だ。よって――仕事以外での自分の声を、思い出せない。
電車が過ぎ去り、ほっ……と息を撫でおろす。電車を見かけるたびに、あれにはねられて死ねたらな、なんて自己を抑制するのが大変だ。みんな、みんな、……辛い。本当に辛いのだろうか? 世界で一番辛いのは自分なんだと。勘違いしてはいまいか? それが自分なのだから。本当の――自分。
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