卒業

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彼は時折、この窓際の席で頬杖をついて外を眺めていた。 その横顔がきれいで、私は今も彼の姿を忘れることができずにいる。 彼の席に座って、彼の真似をして頬杖をつく。 校庭なんて眺めても何も楽しくないのに、彼は何を見ていたんだろう。 1年生の夏休み、彼は突然、私達の前からいなくなった。 「絶対応援に来てくれよな」 最後に会った日、彼はそう言って私の頭に触れた。 「髪ぐしゃぐしゃになるからやめて!」と言う私に、彼は子供みたいな笑顔で「じゃーな」と告げた。 あれが最後になるなんて思いもしなかった。 差し入れに何を持って行こうかと悩む私の元へ、その報せはやってきた。
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