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ブラストはゲイルの戦死した息子だ。比べられたことはなかったが、それでも師匠の心の中を大きく占めていることを、いつでも感じていた。 シルフィにとってのいわば泣き所で、だからそこを突かれてカッとなった。飛びかかって取っ組み合っていたのを、見かねた誰かが知らせたのか、ゲイルがやってきてふたりを引き剥がした。 「ヘイエ、そのぐらいにしておけ」 「だって、ブラストだったら」 「ブラストが死んだのはおまえのせいじゃない。もう忘れるんだ」 その言葉に、ヘイエは急に泣き出しそうな表情になると、逃げるように自分の船に向かって駆け出し、行ってしまった。 「今の、なに」 「おまえは知らなくていい」 「ケンカ売られたのはあたしだよ」 「あぁ、そうだったな。……あいつとブラストは一緒の軍艦に乗ったんだ。あいつは帰ってきて、ブラストはそうじゃなかった。そのことに罪悪感があるのか、事あるごとに息子を引き合いに出す。許してやってくれ」 ああ。あたしをバカにすることで、ブラストの存在を強調したかったのか。不器用な奴だな。 シルフィはそう思った。もちろん、まだ腹は立てていたが。 「ブラストのことをあんな風に、忘れないでいてくれる奴がいるなんてな……」 そう呟いた師匠の瞳に、なにか光るものが見えたと思ったのは、気のせいだったかもしれない。
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