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相手は腕組みをし、なにかを考え始めた。 樽の上にいた奴ほどではなかったが、結構な年齢の男だ。50歳前後に見える。ひょろ長い身体に安っぽい生地の上下を着ていたが、身だしなみはきちんとしていた。 殴ってくるつもりはないようなので、シルフィは立ち上がり、服についた埃を払った。地面に汁が落ちていたのか、全身が魚臭い。 「おまえ、臭ぇな」 相手は手で鼻を摘みながら言った。 「ちゃんと答えただろ。お菓子をくれよ」 手を差し出すと、紙包みを載せてくれる。 「もういいかい。これ早く持って帰りたい」 踵を返そうとすると、肩を掴まれた。 「まあ待てよ。おまえ、そこの街の子だな」 「見りゃわかるだろ」 「ホントにそうだな。貧乏極まれり、って感じだ」 「なんだと」 バカにされカッとなり、シルフィは相手に掴みかかろうとした。 「まあまあ。話を聞けよ」 闇雲に突進してくる小さな身体を器用にかわしながら、相手は言った。 「おまえ、俺の弟子にならないか。素質がある」 「弟子?」 「食うものと住むところだけは保証できるぜ」 それは、シルフィのような育ちの人間にとって、破格の待遇だった。
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