桜舞う傘やさん【シリーズ3作目】

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 「・・・そうでしたか・・・。おめでたなんですね!生まれる前はいろいろありますよ。でも、きっと桜の咲く頃には、退院できますよ。」  おばあさんは、着物に描かれている桜の花びらをみながら答えました。  「ママ~!この傘ほしい!キラキラしているしキレイ!ダメ?」  傘を持ちあげた女の子がお母さんの方に叫んでいます。  「でも・・・今はおひさまの光が当たっているから、輝いて見えるけど、雨降りの日にさしても、キラキラにはならないわよ。」  「いいの!ほしい!だって学校に通うなら置き傘がいるでしょ?どうしてもだめなら、お店の中にある他の傘はどう?」  女の子は、おばあさんに聞いてきました。  さてさて、どうしたもんか・・・。おばあさんは少し考えます。  確かにお店の中に、傘はたくさんありますが、女の子が望む柄がみつかるかどうか・・。 「あの、お店の中を見てもいいですか?」  おずおずとお母さんが尋ねます。陽の光の中、合図のようにきらっと桜のかんざしが光りました。 「どうぞどうぞ!」  光を目に留めたおばあさんは、お店の中に二人を招き入れました。
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