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「へぇ、なかなかいいじゃん」
午後八時前。
更ちゃんを迎えにきた大和さんが店に入るなり私を見て両眉を上げる。
白シャツと黒ベストを着た私は照れで軽く俯いた。
「更ちゃんがいてくれている間は私がキッチンとカウンター両方ヘルプする形でして」
人前にも出るならと衣真ちゃんが制服一式揃えてくれた。
アイドル時代の繋がりでコスチュームやユニホーム関係の会社の人と知り合いらしい。
バイトはけっこうしてきたけど、バーテンダーの格好は初めてだ。お手伝い初日ということもあり、やはりまだそわそわしてしまう。
「めちゃくちゃ似合うな」
「そ、そうですかね」
「やばい、可愛い」
「いや、その」
「一番高い酒どれ?入れてやるよ」
「そういう店じゃない」
隣にいた眼鏡なしの梯さんが私の前に入ってくる。
狭いカウンター内だから彼の背中が近くてドキッとした。
私が隠されたことに大和さんは不服そうな声を上げる。
「なんだよ、いいところなのに」
「よくない」
「女が恥じらってるのを愛でるのがいいんだろ」
「ここでは禁止」
ぽんぽんと会話が交わされていく。
若頭にここまで言えるとは、さすが幼馴染。
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