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「まりぃ、昨日プロポーズされてぇ、やっと結婚するんです」
鼻にかかった甘ったるい声は恍惚感と優越感で今日は倍増しで耳に絡みついてくる。
「そう。おめでとう」
「富士子先輩より先に寿退社するなんて恐縮です」
「ううん、気にしないで。おめでとう」
『おめでとう』を二回も言ったぞ。
だから、さっさとどこかに行ってくれ。
私は昼休みは絶対にリラックスすると決めているのだから。
私が働いているサプリメント会社。そこのお客様対応のコールセンターで日々クレームと紙一重の問い合わせと、新規契約や解約の受付を担当している。
派遣社員としてここへやってきて、正式に社員として契約されたのが半年前。
一方、この岩本まりなは正社員として二年前に入社した。
最初は本社営業部の事務職だったのが、半年前にコールセンターに配属された。どうしてかは……事務の仕事ができなさすぎてだとか、営業部のだれかと不倫して内々に処分されたとか、いろいろ噂が舞っていたけど私にとってはどうでもいいから真相は知らない。
ただ、この岩本まりな。私にとても絡んでくる。
恋人がどうとかプレゼントがどうとか。主に、というかほぼ恋愛に関する話題で私の貴重な休憩時間を潰しにくる。
ルームメイトの由利に話したら、「いるよねぇ、マウント女子」と辟易した顔で舌を出していた。
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