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第二話
「凄いわねえ、優子。今から講座配属のこと考えてるなんて……」
「俺には想像も出来ないなあ、そんな先の話」
入学式の一週間後だった。
親睦会という名目のクラスコンパがあり、同じ学部の仲間たちと話す中、いつの間にか「どうしてこの大学を、この学部を志望したのか」という話題になり……。
私が語った後で返ってきた反応が、これだったのだ。
四年間の大学生活のうち、最初の二年は一般教養が中心で、専門科目ばかりになるのは三年目からだ。卒業研究のために研究室に講座配属されるのが四年目であり、同じ研究室でさらに研究を続けたいならば、大学院へ進むしかない。それが大学のカリキュラムだった。
「そうねえ。私はただ、自分の偏差値的に、ここが相応しいから受験しただけで……」
隣に座る典恵は、大学に入って出来た最初の友人だ。私とは異なり、有名な進学校の出身だった。
「いやいや、典恵ちゃんも十分立派だよ。俺なんて、モラトリアムが理由だからなあ。ほら、社会に出る前の、最後の期間が大学だからさ」
「モラトリアム……? 気取った言い方してるけど、隆の場合、ただ単に遊びたい、ってだけでしょう?」
「ははは……。そう言われると、身も蓋もない」
向かいの席に座る隆は、典恵の指摘を受けて、軽く頭をかいている。
私たちの大学は、いわゆる偏差値の高い大学であると同時に、自由な校風でも知られていた。「よく学びよく遊べ」ということで、サークル活動も活発に行われている。
なるほど「遊びたい」という気持ちで、ここを選ぶ者もいるのだろう。しかし「いわゆる偏差値の高い大学」という時点で、それなりの入学難度なのだ。ただ「遊びたい」だけで入れるのであれば、むしろ凄い話に思えてしまう。
そんな隆の姿は、典恵と一緒に行動していると、頻繁に視界に入ってきた。今日のコンパでも、最初は別の席だったのに、いつの間にか近くに来ていた。
まだ恋人同士という感じではないけれど、とても仲が良さそうな二人だ。私は一度、彼女に尋ねてみたのだが……。
「あの人、典恵の幼馴染?」
「まさかあ。まだ出会ったばかりよ」
まんざらでもない表情で、典恵は笑い飛ばす。
頭の中に「青春」という二文字が浮かび、私も思わず微笑むのだった。
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