2人が本棚に入れています
本棚に追加
うーん、と彼女が唸る。
「死後の世界を見てみたいから?」
彼女はこくんと横に首を曲げた。
「ふざけないでよ」
「まさか、本当よ?ただ――」
彼女はずっと微笑んだままだが、その刹那、彼女の顔に少し影が落ちた。
「ただ、この世界にもう何の期待もなくなっただけ」
「期待?」
「そ。好奇心だとか、求知心だとか、そういうもの」
少し驚いた。彼女がそういうことを思っているなんて――いや、彼女だからこそそう思うのかもしれない。全てを知り尽くしたこの人には、もうこの世界の何もかもがシロクロに見えているのかもしれない。
「だから、包丁か」
「そう」
最初のコメントを投稿しよう!