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卒業祝いに、好きな人から包丁を渡された。それも、その子の名前が入れられた包丁だった。
僕はそれを渡されて、唖然とするしかなかった。
――突然。
そう、突然だった。だって今までに一度も話したことがないのに。クラスだって、一緒になったことがないのに。
「卒業おめでとう」
そう言って綺麗に笑う彼女は、いつだって全校生徒の憧れだった。成績優秀。スポーツ万能。容姿端麗。芸術性もあり、もちろん人間性も素晴らしい。優等生の模範のような人だった。
そんな彼女を好きになる人は、男女問わず砂糖に群がる蟻のようにいた。だってそんなの、好きになる以外に選択肢がないようなものだから。
無論、僕もそんな彼女のことを好きになった。ひと目惚れだった。何をしても凡人としか評価されようのない僕にとって、すべて完璧な彼女はあまりにも眩しすぎた。
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