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第17話 進軍
ハイベルト領に向けて約15,500人の兵士がダラクア領から進軍をしていく。
先頭は指揮をするダニロ侯爵と、30代半ばで赤髪のベッテ副官だ。
赤備えの装備を着た兵士の姿は圧巻で、見たこともない長さの約6.4mの長槍、大型の強弓は、街道を埋め尽くした見送りの人々の度肝を抜いた。
リヤカーを引く兵士も多く、そこには幅1m、縦1.5mはある大型の盾。
その他にも見たこともない兵器と思われるものをたくさん積んでいた。
『いったい、これは何に使う物なのだ?』
人々の好奇心をくすぐるのには十分な演出だった。
そして兵士全員が装備している赤備えの防具は、とても力強く見え圧巻だった。
いつ、こんな数の装備を整えたのかと思うくらいだ。
しかもこの収穫の時期に出兵するなど、前代未聞のことだった。
それだけダラクア領は物資が充実し資金が豊富にあるということか。
ダラクア領を出てしばらくすると兵士は持っていた盾や弓をリヤカーに載せる。
敵陣までわざわざ重い思いをして、持っていく必要はないからだ。
私は馬車に乗せられ揺られている。
聖職者の格好をしているので、教会の者だと兵士が勝手に勘違いしてくれ優しくしてくれる。
私の外見は17~18歳に見え、こんな少女が1人戦場に行くなんて、と兵士は同情的だ。
ダラクア領から出発し、しばらくし進軍し小休止になった。
私は馬車から降りてダニロ侯爵のところに向かう。
「ダニロ侯爵、少し良いでしょうか?」
「なんでしょうか、ビッチェ様?」
「ここからペースを上げたいと思います」
「上げると言ってもあまり強行しては、いざ敵国に付いたら使い物になりません」
「大丈夫です。私の魔法で一時的に能力を上げることができます」
「おぉ、魔法を使っていただけるのですか?」
「ダニロ侯爵、今魔法と聞こえましたが…」
「あぁ、そうだベッテ副官。ビッチェ様は魔法が使えるのだ」
「な、なんと?!そんなことが。だから今回の戦に同行されるのですね。これで意図が分かりました。この世に魔法が使える方がわが軍に。神の加護を頂けるなんて」
「このことを広めて行くのだ。そして正義は我らにあることを広めよ」
「はっ!かしこまりました」
「では私から兵士にこれからのことを伝えて良いでしょうか?」
「勿論です。わが軍の旗はビッチェ様ですから」
そう言われ私は風の魔法を使い、声を兵士全員に届くようにする。
「「兵士の皆さん、聞いてください!!」」
「な、なんだ?!」
「あそこだ!!」
「おぉ、声が、あんなに遠くから聞こえるなんて?!」
「「風の魔法を使い、みなさんに声を運んでいます」」
「魔法だと?!」
「そんな馬鹿な?」
「魔術師はもう居ないと聞いたぞ!!」
「「私はダニロ侯爵にお味方する、魔術師のビッチェと申します。今回の戦いは聖戦です。ハイベルト領は卑怯にも侯爵に暗殺者を襲わせ、生死にかかわる深い傷を負いました!!」」
「魔術師?!」
「それは本当のことか!」
「俺も聞いているぞ!!」
「「兵士の諸君、ダニロ侯爵だ。ビッチェ様の言う通り、私はサルベリア領からの帰り道、ハイベルト領からの暗殺者に襲われたのだ」」
「なんだと?!」
「卑怯だぞ!!」
「「そしてここにいるビッチェ様の回復魔法に命を救われたのだ!!」」
「回復魔法だって!!」
「まさか、そんな使い手が?!」
「「そして今回の数々の新兵器も、ここにいるビッチェ様の発案だ」」
「そうなのか?」
「新しい弓や槍の訓練はきつかったな」
「「そして白兵戦や城攻めの大型兵器もある!!これで負ける訳が無い!!」」
「そうだ!!」
「やるぞ!!おぉ~!!」
「「これからあなた達に能力が上がる魔法を掛けます。サルベリア領はわが軍の到着まで15日くらいと思っているでしょう。ですがこの魔法を使えば、2/3の10日で到着することができます」」
「なんだと?!」
「すげえ!!」
「「相手に援軍が来る前に叩くのです!!いきますよ、みなさん。Over All!!」」
私は身体能力が一時的に上がる魔法を唱えた。
「おぉ、体が軽くなったぞ!!」
「本当だ、体の動きも早いぞ!!」
「「さあ、行くぞ!!このままハイベルト領に進軍だ」」
ダニロ侯爵が大きな声で叫ぶ!!
「勝利を!!」「勝利を!!」「勝利を!!」「勝利を!!」「勝利を!!」
「勝利を我らに!!」「勝利を我らに!!」「勝利を我らに!!」「勝利を!!」
「勝利をダニロ侯爵に!!」「勝利を!!」「勝利を!!」「勝利を我らに!!」
「勝利を!!」「勝利を!!」「勝利を!!」「勝利を!!」「勝利を!!」
「勝利を我らに!!」「勝利を我らに!!」「勝利を我らに!!」「勝利を!!」
兵士の歓声に背中を押され、軍は物凄い速さで進軍していく。
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