第1話 転移?

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第1話 転移?

『…チェ、…チェ、起きて…』  『ねえ、起きてよ…』   誰かが私を呼んでいる。  私は目を開け、身を起こして辺りを見渡す。  長い穂が垂れる穀物畑の中の様だった。  麦?  では季節は夏?  よく見ると私の顔の前に15cmくらいの、可愛い女の子が浮かんでいた。  短めのベストを着て、赤色の長袖にショートパンツ。  金色の長い髪と背中から上下左右2枚ずつ、4枚の透明な羽根を生やしている。 「ミリアちゃん、もう朝なの?」 『なにを寝ぼけているのよ!』  「ここはどこ?」 『あぁ、もう』   仕方がないわね。  私の名前は妖精(フェアリー)のミリア。  半神の私は偉い神様になるため、日々、妖精の国(フェアリーランド)で勉強をしていた。  そこで経験を積んで認められると、昇級試験と神様との面談がある。  これが大変で受かると次の上位の神様に上がれる。  それを何十万年も繰り返して、新しい世界を増やしていくのが私達の仕事。  なぜなら終わる世界もあるから、新しい世界を創っていかないと。  信仰する人が居なくなると、神様も存在理由が無くなるからね。  そしてたくさんの世界を創造し、それを管理する人を育てる。  それが妖精の国(フェアリーランド)。  そんなある日、美味しそうな膨大な魔力を感じた。  私はつい、それに食いついてしまった。    そして気が付いたら王女の国に召喚されていた。  その国は魔物の数が増えて、国を挙げて討伐をしても倒しきれなくなっていた。  おかげで国土間の流通が途絶え、食料も乏しくなる。  瘴気(しょうき)と呼ばれる黒いものができ、そこから魔物が大量発生する。  次元に(ほころ)びができていたのよ。  その世界は比較的、魔素に満ち魔法が発達した世界だった。  その世界の周りを包んでいた魔素がその世界に少しずつ浸透していた。  それをその世界の人達が吸っている。  だから魔法が使える人が居る。  そしてそれが貯まると形を作り、魔石という核になり魔物になってた。  ある日、今まで少なかった魔物が大量発生するようになった。  世界のどこかに綻びができ、魔素が必要以上に入ってくるようになったから。  王女の立場はその国では名ばかりだった。  父親である第一王子には才がなかった。  他に腹違いの2人の王子がいた。  2人の王子には才能があり、王女の父親は凡人。  そんな父親の後ろ盾になってくれる人は現れなかった。  次の王になれなかった場合、今の王が亡くなったら愁いを断つために、残された王家の血を引く者は殺されるのが常だった。  そして魔物を浄化するため、聖女召喚をして私が呼ばれた。  父親を次の王にする実績欲しさのために。    自国だけでも、と言う王女の頼みに私は条件を出した。  私は半神なので特定の人だけに加担できない。  やるなら全世界だと。  王女は了承した。  父親が次の王となり政権が安定すれば世界を周り、綻びを塞ぐ旅をすることを。  そして王女は長い旅に備え、私の使徒として不老不死となった。  何年もかかり私と王女は自国の次元の(ほころ)びを塞いだ。  聖魔法でたくさんの人の病を治し、倒した魔物の肉を飢えた人達に配った。  いつのまにか王女は聖女と呼ばれるようになった。  その功績で父親も次の王となり、腹違いの2人の王子に忠誠を誓わせ補佐とした。  それ以降から王になれなくても、王子は生き残ることが許された。  そのため、次の王からは政権争いが少なくなった。  王女の父親は確かに才はなかった。  だが自分が出来ない分、人を信じ任せることで臣下は出世できる国になった。  そして生まれや出は関係なく、才能があれば登用した。  国には人が集まり、活気があり笑顔が溢れた。  それを見届け王女は私と次元の(ほころ)びを塞ぐ旅に出た。  そしてたくさんの街や国を回り、魔物を倒し肉を配った。  時が経ち、どこの国も王が何度も代替わりした。  その度に次元の(ほころ)びを塞は少なくなり、食べ物が豊富になり人々は幸せになっていった。  しかし世界は広く何百年もかかってしまった。  ようやく最後の1つとなった時、それは起こった。  数多の魔物を倒した後、次元の(ほころ)びにやっと近づいた。  すると瘴気(しょうき)がそこからあふれ出そうとしていた。  まるで最後の出口から、早く出ようとするかように。  私と王女で残った魔法を使い、最後の(ほころ)びを塞いだ。  と、思った瞬間だった。  (ほころ)びが塞がる前に、強い力で弱っていた私達を飲み込んだのだ。  逆らえない力だった。  私達は(ほころ)びの中に閉じ込められた。  王女は(ほころ)びの中では、魔素を浴び過ぎて死んでしまう。  だから私の時空間魔法のストレージに、慌てて王女を収納した。  ストレージはとても便利で、収納したものの時間を止めることができる。  だから何万年経っていても、時間が経過していないから歳を取らないのよ。  ここから出るまでしばらく眠っていてね。  そこから何年、何百年、いいえ、もしかしたら何万、何十万年が経った。  半神である私には大した時間ではなかった。  そしてこの世界から脱出するために魔力を溜めた。  次元を渡るほどの、魔力が必要だった。  それから更に時は経ち、やっと魔力が溜まった。 『いくわよ~!!さん、に~、いち~、だぁ~~!!』  私は何千年も掛けて溜めていた魔法を放った!!  すると僅かに空間に裂け目が…。    やった、今よ!!  私は夢中になって、裂け目に飛び込んだ。  そしてこの世界に転移してきたわけ。  しかし私1人では…。  王女とまた旅がしたい。  どうやらここは、麦畑らしい。  私はそこにストレージから王女を出した。  フード付きの白いローブ。  そして藍色の肩まである懐かしい髪。  お帰りビッチェ。  私は横たわるビッチェのおでこにキスをした。
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