第11話 領土開拓

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第11話 領土開拓

 私達はダニロ公爵の屋敷に着き、部屋に案内され休んでいる。  しばらくすると、さっきのメイドさんが私を迎えに来てくれた。  応接間に通され部屋の中に案内された。 「さあ、どうぞビッチェ様」  ダニロ公爵に促されソファに座る。  向かいのソファには、ダニロ公爵と父上と呼ばれた人が座った。  そして後ろには執事のセバスクンが立っている。 「ビッチェ様この度は、我が息子家族がお世話になりました。私はダニロの父、ダレナンです」  ぶぅ~~!!  ダレナンですか、もういいです。  そして他にも少し離れたテーブルに人が居た。 「紹介いたしますビッチェ様。息子のダレレです。ほら挨拶をしなさい」 「ビッチェ様、初めましてダニロの息子、ダレレです」 「そしてもう1人、母のナンマです」 「初めましてビッチェ様。この度は本当にありがとうございました」  そう言うと軽く頭を下げられた。 「初めまして私はビッチェ・ディ・サバイアと申します」  私は思わず立ち上がり両手でローブの裾を軽く持ち上げ片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま挨拶をした。  目上の相手に対して行う挨拶、カーテシーだ。 「まあ、」  ナンマ様は少し驚いた顔をした。  そのテーブルには奥様のダリーナ様、娘のダリダ様がいて同じように驚いていた。 「息子のダニロから話は伺いました。本当にこの度はありがとうございました」  そう言うと家族全員で頭を下げられた。 「いいんですよ。私にできることをしただけです」 『なんて、良い子的な返答なんでしょ』  ミリアちゃんが茶化す。  まあ、気まぐれです、とも言えないから。  そしてナンマ様、ダリーナ様、ダリダ様、ダレレ様は部屋から出て行った。  残ったのはダニロ公爵、ダレナン元公爵、執事のセバスクンだ。 「それでは話を始めましょう」  ダニロ公爵が言うと、ダレナン元公爵が聞いてくる。 「その前に伺いたい。本当にビッチェ様は魔法が使えるのでしょうか?」 「えぇ、使えますわ。ですが今はこの事は他言無用に願います」 「分かりました。お約束致します」 「ビッチェ様、これからのことですが…」 「そうですね、ダニロ公爵。まずは国を豊かにして人を増やすことです」 「それはそうですが、いったいどうすれば…」 「この領では冬は農業をやらないのですよね?」 「ええ、そうです」   二毛作かしら? 「家畜はいますか?」 「はい、豚やニワトリなら飼っております」  私はストレージの中で格安スマフォの画面で検索で調べている。  効率的な農法は……、あったこれだ!!  家畜を飼っているから、丁度いい農業があったわ。 「それなら一年中作物を作り、畜産にも力を入れましょう」 「一年中作物を作るのでしょうか?」 「はい、そうです。私がやろうとするのは混合農業です」 「「 混合農業ですと? 」」 「はい、土地を4つに分け家畜の飼育を組合わせます」  私は2人に混合農業について話した。  混合農業とは作物と家畜の飼育の両方を行う農業だ。  色々な作物を混合して生産するので、混合農業というわけだ。  夏に大麦を栽培し秋に収穫する農地。  クローバーなどの牧草を栽培し、牛・豚など家畜用地。  冬に小麦を栽培し春に収穫する農地。  カブなどの根菜類を栽培する農地の4つに分ける。  その分けた4つの畑で1年ごとに、冬に小麦栽培⇒根菜類栽培⇒夏に大麦栽培⇒牧草栽培とローテーションしていく。       農地1    農地2   農地3   農地4  1年目 冬は小麦   根菜類  夏は大麦  牧草                    農地1    農地2   農地3   農地4  2年目  牧草     冬は小麦   根菜類  夏は大麦                         農地1    農地2   農地3   農地4  3年目  夏は大麦    牧草   冬は小麦  根菜類                             農地1    農地2   農地3   農地4  4年目  根菜類    夏は大麦   牧草   冬は小麦  この4つを交代で繰り返していく。  1つの土地を見ると今年は夏に大麦を栽培、来年は根菜類を栽培、その翌年は冬に小麦を栽培、さらに翌年にはクローバーなどマメ科の植物を牧草として栽培する。  でも農地を休ませないと、土地が持っている作物を育てる能力が回復しない。  麦は麦、カブはカブが育つのに必要なそれぞれ特定の栄養素がある。  だから同じ土地でずっと同じ作物を育てていると、特定の栄養素だけどんどん吸収され土壌から消えてしまう。  するとその作物は育ちが悪くなり、収穫量が減ってしまう。  牧草、根菜など異なる作物を育てることで、作物を育てる力の低下を防止することがでるのだ。  根菜類は土壌を深く耕す役割があり土壌を改善してくれる。  クローバーなどマメ科の牧草は、空気中の窒素を栄養分として土壌に取り込んでくれる性質がある。  更に牧草の農地に家畜を放牧し、家畜が落とす糞尿が土地を回復させてくれる。  土地を休ませなくなることで、生産するものが増えることを話した。  そして土壌中にある部分を食用できる、根菜(こんさい)類も多数ある。  ゴボウ、ニンジン、ダイコン、カブ、サツマイモ、ジャガイモ、タマネギなどだ。  これだけで、食べていけそうだ。 「この農法を行えば今までに比べ、根菜類が1年中収穫できるので収穫量は今までの1.5倍にはなると思います」 「「 1.5倍ですと! 」」  ダレナン元公爵とダニロ公爵が目を開き驚いている。 「それに農地を1/4にするので、一回の農作業も少なくなり楽になります」 「ほう~、それはいいですな」 「1年を通して農作業をしていることになります。その反面、凶作の時にも 1つの穀物に頼っていないので、乗り越えやすいと思いますが」 「それは凄い。ビッチェ様は、いったどこでそのような知識を」 「女の子の秘密は聞いては駄目ですよ」 「はあ、あはははは!!」 『451歳の女の子て、かい?』  妖精(フェアリー)のミリアちゃんがみんなが居る時は、私が答えられないのを良いことにからかってくる。  ダニロ公爵が心配顔で言う。 「ですが、それでは人手が足りなくなります」 「だからいいのです、農民の方はどうでしょうか?他の領が景気がよく、仕事があるのに今の領地に執着しますか?」 「しないでしょう、長男ならともかく次男や三男なら自分の土地も無く、安い給料で働くだけです。それなら働く場所がある土地に移動するでしょう」 「では、その噂を他の領地に流してください。そして流民を集めるのです」 「我が領で働き手を集めていると、それは良い考えです」 「農民の給与はどうなっていますか?」 「はい、出来高の半分を払っています」 「それでは最初の給料は半年以上先になりますね。ではこれからやってくる流民は国が雇い、最初は日給制にして勤務評価により4ヵ月目は月給制にして向上心を煽るのです」 「月給制ですか?聞いたことがありません」 「えぇ、そうすれば毎月の収入も安定し、働きがいもあるでしょう」 「来ます、それなら必ず人が集まるでしょう。そんな農民寄りの考えの領はありませんから」 「あと諜報、破壊、(はかりごと)、暗殺活動などを得意としている部族はいませんか?」
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