第13話 敵対する者

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第13話 敵対する者

 私達は馬車を襲った賊の2人がいる騎士舎を訪れている。  留置場のドアを開け、看守のガナンを先頭に私達は中を進んで行く。 「ここです」  そうガナンに言われ、私達は足を止める。  見張りが2人立っており、木枠の格子牢の奥に捕虜の2人の顔が見える。 「何の用だ、俺達は絶対に喋らない。それが掟だ」  補佐官らしい男が喚きたてている。 「さっきからこれの一点張りなんですよ」  見張りの男が困った顔で言う。 「喋らないなら良いわ。それならここで死になさい!!」  私は言葉を冷たく放つ。 「ビッチェ様、それは…」  ダニロ公爵が声を掛けてくる。   「良いのではないでしょうか?ダニロ公爵。彼らには彼らの信念があって今回のことを請け負ったはずです。そして必ず成功する保証はないと。死と隣り合わせの依頼だったはずです」 「それは、そうですが」 「そしてまた次が襲ってくるでしょう。その時にまた捕まえ吐かせればいいのです」 「そんな簡単にはいきませんから」  ダニロ公爵が困ったように私に言ってくる。 「あなた達には家族はいないの?今回の奇襲で26人は死んだのよ?残された家族は、あなた達が戻らなくても生活は出来るのかしら?」  私は賊の2人に話しかける。 「そ、それは…」 「男手が26人いなくても、やっていける集団なのかしら?」  すると男は黙り込む。 「そうね、事と次第によっては助けてあげても良いわよ」 「ビッチェ様!!」 「ダニロ公爵。私はあなた達の命を助けました。この2人の命くらい私の自由にさせてください」 「わ、分かりました。仰せのままに…」 「と、言う事よ。どうあなた達、話す気になったかしら」 「だが雇用主の秘密は絶対だ。それを言えば信頼が無くなり、次からは依頼が来なくなる」 「もう、来ないのでは?弓兵も居て28人で馬車を襲い、返り討ちに会うなんて。そんなところに依頼する人が居ると思うの?」 「うっ…」  指揮官らしい男が唇をかむ。 「そして来たとしても、男手の少なくなった部族ではこなすことは出来ない。いずれは朽ち果てていくしかないわね」 「ちっ、それで俺達にどうしてほしいんだ」 「そうね、私に雇われない?」 「お、お前にか?」 「えぇ、私が欲しいのは諜報、破壊、(はかりごと)を得意としている部族よ。暗殺は二の次でいいわ。武力よりも情報収集が主な仕事ね」 「そんなことをしてどうするのだ?!」 「決まっているでしょう?戦をするには情報が必要なの」 「戦をする?どことだ?」 「もちろんレイトン国よ。残りの7州全域を纏め、お飾りの王にも廃嫡してもらう」 「そ、そんなことが出来るわけがない」 「そうね、人力ではね。でも魔法があればどう?」 「な、なんだと?!あれはやはり魔法だったのか?!」 「そう、そしてこのダラクア領は全国に向け、快進撃を始めるわ。それに参加しない?国を統一して戦の無い豊かな生活ができる世界を一緒に作ってみない?」 「戦の無い豊かな生活…、そんなことを思う奴がいるなんて」 「でも私が欲しいのは1人や2人ではないの。その一族ごとよ。でもあなた達を雇うにしても、私はそんなにお金がないのよ。これから国盗りが出来れば増えるかもしれないけど。どう?」 「そ、それは…」  補佐の男が口ごもっていると、指揮官らしい男が話始める。 「一族ごと雇って頂けるのですね」 「人数にもよるけどね」 「それであれば我が一族をいかほどで、雇って頂けるのでしょうか?」 「月500万でどうかしら?」 「ご、500万ですと?!」  指揮官らしい男は目を見開き驚いている。  それはそうね、一族丸ごと雇って月500万て、安いんだわきっと。   「わ、わかりました。お受けいたしましょう」  え、いいの? 「本当に月500万でいいのかしら?」 「逆にうかがいます。本当に月500万頂けるのでしょうか?」 「も、もちろんよ。でも私が欲しいのは、お金の付き合いでも良いから裏切らない人。裏切りは絶対に許さないわ」  まさか2人しかいないとか、はないでしょうね? 「裏切らないですか…。では我ら一族は、あなたに従います」 「わかったわ、宜しくね。私はビッチェよ」 「私は鳥羽村のローデリックです」  指揮官らしい男は名を名乗る。 「私はヨルです」  副官の男も名乗った。 「鳥羽村はどこにある村なの?」 「はい、ハイベルト領の小さなん村です」 「なんだと!では貴様たちはハイベルト領の者か?!」  ダレナン元公爵が叫ぶ!! 「はい、その通りです」 「ダレナン様、ハイベルト領というのは?」 「ハイベルト領は我がダラクア領の西に隣接する、ハオルド侯爵が統治する領です」 「ではハオルド侯爵が、あなた達にダニロ公爵暗殺の依頼を出したのね」 「えぇ、鳥羽村は昔から土壌が粘土質で、田畑の被害が頻繁にありまして。農耕で生活できない分、傭兵で賄っているのです」 「ハオルド侯爵がダラクア領を狙う理由はなんでしょうか?」 「はい、私がお答えいたします」  そしてダニロ公爵が話始める。 「我がダラクア領の東には隣国のマヌエラ国。南は叔母ダルダルが嫁いでいるサルベリア領。北は我が母ナンマの実家でもあるナンダン領です」 「北と南を友好国に囲まれているのね」 「えぇ、そうです。それもあり我が領は農業に力を入れられるのです」 「でも他の領からすれば一番狙いやすいと言うことね。領主を暗殺を内政が不安定になったところを攻める、こんな所かしら」 「そうかもしれません」 「でもこれで攻める大義名分ができたわね」 「ですが攻めるには兵士が少なすぎます」 「どのくらい徴兵できそうですか?」 「今は夏ですから麦の刈り取りの時期になります。その為、集められても通常の半分以下、東の出城500人と徴兵で700人。全部で1,200人くらいでしょうか?」 「それは相手も同じでしょうか?」 「ほぼ同じと考えていいでしょう」 「数が同じならこの戦、勝たせてもらいましょう」  私はそう笑ってみせた。
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