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第15話 第一歩
私は妖精のミリアちゃんに戦い方について相談した。
『そうね、この世界で生産できない様な武器は駄目ね』
「他の世界には色んな武器があるの?」
『あるわよ。例えば銃ね』
「銃?」
『筒に鉛の球を入れて火薬と言う物を爆発させて、その力を使って鉛を飛ばすの』
「そんな武器があるのね」
『そして改良が進めば1発ずつだったのが、連射できるようになって銃があれば1人で何十人も倒せるのよ』
「それは凄いわ!!」
『でもこの世界にないものを出しても、私達が居なければ作れないものでは駄目よ』
「そうね」
『弓の打ち合いから始まり、槍隊が進軍し最後は白兵戦になるならこれね!』
「どれよ!!」
『まず弓を強弓にすることね。そして槍を長くするのよ』
「槍を長くする?」
『えぇ、私の好きな世界の戦国武将、尾張の信ちゃんが考えた戦法があるのよ』
「どんな戦法かしら?」
『長槍よ。合戦は弓戦から始まり、次に槍隊が槍を揃えて突撃して槍戦となるのよね。敵の突進を止め、敵を負傷させて引き退かせ戦意を喪失させることが合戦の重要なポイントなのよ』
「そうなんだ」
『だから普通は槍隊が前方に向けて槍を水平に構え、最前線の者が倒されればすぐに後の槍隊が前進してその穴を埋めていたの。そこで信ちゃんは考えたのよ』
「どんなふうに?」
『槍は長いほうが良いという結論を出したの。当時の槍約4.5mが普通だったけど、約6.4mの長槍は信ちゃん軍独自のものだったの』
ミリアちゃんは話始める。
長槍隊の兵が密集して隊列を組み、槍の穂先を隙間なくそろえ並べる。
また長槍隊が槍の元の石突を地面に突き刺し、根元を固定してから槍を斜めにすれば、杭と同じ効果を得ることができ騎馬隊の突進を阻止できる最強の防御形態が出来上があった。
槍の穂先を隙間なくそろえ並べる槍衾は、4.5mの槍隊の接近を防ぎ騎馬隊の突進も妨げぎ隊列の間隔を一定に保ちながら前進する。
敵は向かってくることが出来ずひたすら押し返し、敵が退いた所に槍隊の背後に布陣している精鋭部隊が突撃する戦法だと。
信ちゃんの長槍隊の戦法は槍は突いたり、刺したり、払ったり、叩いたりという今までの槍隊の常識を変えた戦法だったと。
「それはいい案ね。強弓で遠くから敵に弓を放ち、その後は長槍の穂先を隙間なくそろえ並べれば敵の槍は届かず掛かって来れないわ」
『そうでしょう!』
「そして私が魔法でOver Allを唱え、一時的に身体能力を上げてあげれば怖いものはないわ」
『そうよね、相手の槍や剣が届かなければ、兵士は死ぬことはないものね』
「ある意味、初めて戦う相手は恐怖でしょうね。でも長槍や強弓はどうするの?」
『そうね、今から作らせても間に合わないわね。私が格安スマフォを使って、異世界通販サイトで購入するわ』
「ダニロ公爵に貸しにね」
ダニロ公爵は南の叔母ダルダルが嫁いでいるサルベリア領と、北の母ナンマの実家でもあるナンダン領に援軍の使者を出した。
正義はこちらにあり傍観するなら構わない。
だが国内統一に乗り出した以上は今後争うことになり、味方になると言っても後から受け入れることは出来ないことを使者に伝えさせた。
これが後に『第六天魔王』と呼ばれた、ダニロ公爵の第一歩だった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺は鳥羽村のローデリック。
この村のリーダー的なことをやっている。
そしてそれを補佐してくれているのがヨルだ。
村に入る、そして仲間が迎えてくれる。
他の家より、一回り大きい村長の家に入る。
「長老、只今帰りました」
「ローデリックか、首尾はどうであったか?」
「はい、私とヨル以外は全員死にました」
「な、なんだと?!28人もいて26人死んだと。して目標は射止めたか?」
「はい。馬車越しに脇腹を深く差し…」
「ほう、やったか?」
「いいえ、生き返りました。あの傷では絶対に助からないのに」
「なにを言っている?」
「魔法使いです。魔法使いの女性が現れ私達を魔法で倒し、回復魔法で瀕死の公爵を治しました」
「なに?!魔法だと!!本当か、今時そんな話は聞いたことが無い」
「私も驚きました。17~8歳の女性です」
「なに女性だと?なぜ、そんな魔法使いがそんなところに居るのだ」
「旅の途中の様でした」
「旅の途中だと?もしそれが本当なら国賓級の扱いになるはずだ」
「本人は、その自覚が無いようで」
「無いだと?それで、どなったのだ?」
「はい、私達はその女性の魔法で倒され、騎士達に捕まり仲間は殺されました」
「な、なんだと!」
「俺とヨルは捕虜として生かされました。そしてそこで魔法使いのビッチェと言う女性に誘われました」
「誘われただと?」
「えぇ、私に雇われないかと言われました」
「雇う言うのか、その女性が…」
「欲しいのは諜報、破壊、謀を得意としている部族。暗殺は二の次で武力よりも情報収集が主な仕事だそうです」
「何を始める気だ?」
「国盗りです。ダラクア領が国盗りを始めるのです。国を統一し戦の無い豊かな生活ができる世界を作るそうです」
「そんな馬鹿な夢のような話を…」
「そうかもしれません。ですが月500万円頂けるそうです」
「な、なんだと?!月500万円だと!!」
「えぇ、そうです。我ら28人がダニロ公爵殺害の依頼を受けた金額が300万円。1つの仕事で28人で1人10万くらいになるので、受けたのですが結果はこの通り…」
「そうだな。街に暮らしていれば金は掛かるが、この村は自給自足だから金はそれ程、かからないからな」
「それに半数以上の男は死にました。後に残されたのは女子供だけです。そんな村に依頼をする者はもういないでしょう。それに居ても人数が足りず、大きな仕事は受ける事はできません」
「そうだな。成人した男がお前達を入れて26人。後30人ほどは女子供とわしを含めた年寄りだ。だが月500万円あれば、十分に生活できる」
「えぇ、そうですね。これからは安心して生活が出来ます」
「本当だな、これもある意味、災い転じてだな」
「そうですね、そして最大の災いはこれからです」
「どう言う、ことだ?」
「ダニロ公爵、いいえ。ビッチェ様に使えるに当たり、本当のことを言いました」
「本当のことだと」
「今回の暗殺の首謀者はハイベルト領のハオルド侯爵だと。そしてそれを口実にダラクア領は、ハイベルト領に戦争を仕掛けます!!」
「な、なんという事だ?!」
「そろそろダラクア領の使者が、ハイベルト領に到着するはずです。そして我々が裏切ったことが分かれば、報復があるでしょう」
「それでは、その女性に雇われる前に一族共々殺されてしまう。生き残れまい」
「だから秘策をビッチェ様より授かってきました。もう我々は後戻りできません」
「そのようだな。どうもビッチェとか言う、その女性にハメられた気がするの」
村長は一呼吸置くとこう俺達に告げた。
「よし村人を集めろ!!これからのことをみんなに話そうではないか」
俺達は安堵した。
村長が賛同しなければ、みんなを切るしかなかった。
ビッチェ様は裏切りを絶対に許さない。
『人を憎んで罪を許さず』と言うお方だからだ。
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