第2話 剣戟

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第2話 剣戟

「ねえ、ミリアちゃん。ここはどこ?」 『わからないわ。どこか座標があって転移したわけではないから』 「あれからどうなったの?」  私は今までのことを話した。  最後の(ほころ)びが塞がる前に、私達を飲み込んだ。  そしてビッチェは私の時空間魔法のストレージに収納した。  何年、何百年、もしかしたら何万、何十万年が経った。  その世界から脱出するために魔力を溜めた。  そして次元を渡るほどの魔力を溜め、この世界にやってきたことを。 「そんなことがあったの。ミリアちゃん、偉いね、1人で頑張ったね」 『子供みたいな言い方はやめてよ!!』 「だって私にしてみれば、(ほころ)びに飲み込まれたと思ったらここにいるんだもの」  ストレージに収納されている間は、時間が止まっている。  だから収納されていた時の記憶はないことになる。 『これからどうしようか?』 「麦畑があると言う事は人が居るはず。だからまずは人里を捜しましょうか?」 『そうね、そうしましょう、ビッチェ』  私は妖精(フェアリー)のミリアちゃんを肩に乗せ、麦畑からあぜ道にでた。  日差しが強くとても暑かった。  私はフードを被り風と氷の魔法で、ローブの中を冷たい風が流れるようにした。  ただ歩いても歩いても麦畑が終わらなかった。 「豊かなところなのね」 『どういう事?』 「これだけ歩いても麦畑が終わらないなんて」 『飛んで行けば?』 「そうね、もう陽が真上に来ているから、暗くなる前に人里に入りたいわ」  私はまずシャドウの魔法で、体が光を反射しないようにした。  光りを反射するから存在がわかる。  だから反射しなければ、違和感はあるにしろ私とは分からない。  そしてフライの魔法で浮き上がる。  フライの魔法は高度は上がらないけど、歩くよりは遥かに速い。  地面に少し浮き滑るように地面の上を進んで行く。  何か今までとは違い魔法の展開が悪いような気がする。  住んでる世界が変わったせいかしら?  気のせいかもしれない。  街道に出て私達は道を進む。  すると剣戟が聞こえて来た。  元の世界で何百年も聞いてきた音だった。 『どうするの?行ってみる?』 「そうね、出会いが無いと人と関わり合えないけど、面倒ごとなら嫌だわ」 『今の魔法の掛かった状態なら、相手に見えないから。様子だけでも見てみたら?』 「分かったわ。そうしましょう」  音のした方に行くと、立派な馬車が3台止まり、賊らしい人に襲われていた。  賊といっても訓練された、高価な装備をしているが…。 『どうするのよ』 「う~ん。どちらが悪で、どちらが正義かなんて私にはわからないし」 『では、見ているの?』 「それもね」  3台の内一番前の馬車が侍女達、二番目が貴族、三番目が荷物というところね。  馬車を守る人は騎馬と歩兵で片側12人ずつの24人か。  襲っている側は賊にしては装備が立派ね。  見えているだけでも、剣を持った人が20人はいる。  そして弓矢の跡が馬車にあるから、更に人数が多くて不利ね。 「きゃ~!!お父様!!」  見ると真中の馬車の外側から、賊が剣を刺していた。  馬車のように木で作られた乗物は、幅の細い剣で合わせ目から刺して襲うものだ。 「仕方ないわね!!」  私はそう言うと馬車まで飛んだ。  そして殺していいものか分からない為、麻痺させることにした。 〈〈〈〈〈 Lightning Ball(ライトニング ボール) 〉〉〉〉〉   〈〈〈〈〈 Lightning Ball(ライトニング ボール) 〉〉〉〉〉  バチ、バチ、バチ、バチ、バチ!!     バチ、バチ、バチ、バチ、バチ!!  私はライトニング ボールを放った。  この魔法は便利で球体状の魔法が飛び、更に球体から15~20cmくらい魔法が伸び放電しながら飛ぶからだ。  球体が当たらなくても、伸びた魔法がかすれば痺れてしまう。  突然、飛んできた球体に驚いたのか、払おうと剣で切りつけた。 〈〈〈〈〈 バシッ!! 〉〉〉〉〉  青白い火花が散り賊は吹き飛んだ!!  あれ?  雷系の魔法を剣で叩いたら駄目でしょう?  雷系自体、使う人が珍しいから、知らないのかな? 「気を付けろ!!何かがいるぞ?!」  あれ?気づいた人が居るみたい。  では、それなら。  私は馬車の近くまで行き、個別に狙う事にした。 〈〈〈〈〈 Lightning(ライトニング) 〉〉〉〉〉  バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!    バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!      バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!バチ!!  うわっ!!うっ!!あっ!!うわっ!    あっ!!うわっ!うわっ!!うっ!!      あっ!!うわっ!うわっ!!うっ!!  賊が次々に倒れていく。  その頃には私の居場所も分かってしまった。  それはそうだよね。  何もない空間から、青白い魔法が飛んできたらさ。  私はシャドウの魔法を解いて姿を見せた。  居場所が分かってしまえば、使う意味がない。  それになぜか魔力回復がいつもより遅い。  だから魔力を無駄に使いたくなかった。 「な!!なんだ?!」  賊の何人かが驚く!!  やはり魔法は面倒だ。  大魔法で吹き飛ばすならともなく、1人1人を倒していくのには向いていない。  遠い昔は私の側に仕えてくれた、双子の戦闘メイドが居た。  こんな時、居てくれたらいいのに。  でも今はもう居ない。  長生きするものではないわね。  だから自分でやるしかない。  私はミリアちゃんのストレージの中から剣を出す。  昔、私に仕えていた双子のメイドが使用していた、ミスリルソードの1本だった。
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