第4話 回復魔法

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第4話 回復魔法

「お父様!!お父様、しっかりしてください!!」 「旦那様、しっかりしてください」 「あなた、あなた!!」  馬車の中から女性と幼い少女と男性の声が聞こえる。 「ちょっと、いいかしら?」  私は馬車の中に声を掛けてもらい、馬車の護衛にドアを開けてもらう。 「奥様、賊の討伐に助勢頂いた方がお会いしたがっております」 「わかりました、どうぞ開けてください」  中には金色の長い髪を後ろに束ねた10歳くらいの女の子と、母親らしい20代後半の女性。  そして50歳くらいの執事らしい人が居た。 「あなた様はどなたでしょうか?!」  女の子が私に聞いてくる。 「私はちりめん問屋の娘でビッチェです。縮緬(ちりめん)の布地を買い付ける旅をしています」 「ビッチェ様…。縮緬(ちりめん)ですか?」  少女は首を傾げる。  知らないの?全国を回る旅と言えば縮緬(ちりめん)問屋でしょう? 「それよりお嬢様、旦那様が…」 「あなた、しっかりしてください!!」  奥様と呼ばれた女性が男性を気遣う。 「ちょっと見せていただだけるかしら?」 「ビ、ビッチェ様はお医者様なのですか?」  少女が私に聞いてくる。 「お医者様が何なのかは知らないけど、早くしないとお父さんが危ないのでは?」 「分かりました。お願い致します」  ビッチェは医者が何かを知らなかった。  なぜならビッチェのいた世界では、魔法が発達し医学が停滞していたからだ。  私は脇腹から血を流す20代後半の、銀色の髪をした血だらけの男性の側による。  奥様が私に場所を開ける。 「ミリアちゃん、お願い」 『任せて!!』 『Medical examination(メディカル イグザミネイション)』  すると私の周りが明るく輝く!! 「えっ?!」  なぜか奥さん達3人はとても、驚いた顔をしている。 『診察の魔法で確認したわ。右横から刺されて大腸貫通ね。他の臓器には幸い影響はないみたいね。だから後は塞げばいいだけよ。でも血液が足りるかよね。さすがにこれだけ流れていると、傷を塞いでも助からないかもしれないわ』 「では、どうしたらいいの?」 『簡単よ、血が足りないなら輸血すれば良いのよ』 「輸血?!」 『えぇ、そうよ。でもこの世界の人では、そんな医療知識も無いと思うわ』 「では助かる為には、それをすればいいのね?」 『助かる可能性が非常に高くはなるわ』 「でも血液なんてないわよ?」 『あるじゃないの?』 「どこに?」 『私のストレージの中よ。今まで倒した魔物が、そのまま保存してあるでしょう?』 「でも、それいいのかしら?」 『だから家族の了承が居るのよ』 「ありがとう、ミリアちゃん。分かったわ」  私は小声でお礼を言うと奥さんらしい人に向き合う。 「奥様。よろしいですか?このままではご主人は助かりません!」 「あぁ、やっぱり」  奥さんは目頭を押さえる。  剣でわき腹を刺され、これだけの出血をして助かるとは思えなかった。 「ですが助けることが出来るかもしれません!」 「ほ、本当ですか?!」 「はい、可能性はあります。ただ本当にどんなことをしても、助けたいのか知りたいのです」 「勿論、助けたいです!!」 「覚悟を決めれますか?」 「は、はい、もう決めています」 「分かりました」  私は男性の傷口に手を添え回復魔法を唱えた。 〈〈〈〈〈 Regenerate(リジェネレイト) 〉〉〉〉〉  先ほどよりも更に一回り大きく私の体は輝き、傷に添えた手は光輝く!! いつのまにかミリアちゃんとの旅でレベルが上がり、Healing(ヒーリング)の1ランク上の回復魔法を私も使えるようになっていた。  他の属性の魔法にしてもそうだ。  ミリアちゃんの使徒になってから数百年。  魔法を使うようになっていつの間にか、私もそこそこ使えるようになっていた。  私は怪我の細かい調整をしていく。  回復魔法はとりあえず治す魔法だ。  だが細かいところは治していない。  だから仕上げが必要になる。  そして静脈からストレージに収納されていた、妖巨人(トロール)の血液を抜き少しずつ男性の体内に流し込んでいく。  ミリアちゃん曰く、妖巨人(トロール)なら再生能力が高く、人に適応しやすいのではないかと言う事だった。 「もう、良いみたいね」  私は傷口が塞がったことを確認し振り返った。 「後はご主人の体力次第です。あの~、どうされたのでしょうか?」  すると奥さんと娘さん、執事の3人は、両手を胸の前で組んでこちらを見ている。 「ビッチェ様は聖女様なのでしょうか?」  奥さんが私に聞いてくる。 「聖女ですか?あなたの言う聖女の定義は何?それにお名前は?」  私はつい聖女の話がでてきたので、ムキになって言ってしまった。 「申し訳ありません、私達は名前も名乗っておりませんでした。私の名はダラクア領当主ダニロ ・ダイゲルト・ダームブルック公爵の妻ダリーナ。この子が娘のダリダです」  はあ、みんな『ダ』から始まるのね。  ここは笑うところなのかしら?  でもダリーナ様の顔を見ても、目は笑ってはいない。  ここは耐えるところなの?  ウケ狙いではないのね。  よかった、乗らなくて。  もしかしたらこの国は、そういう習慣があるのかもしれない。  一族全員が『タ行』の一族とか? 「もしかしたら普段、ご主人の事を『ダーリン』とか読んでます?」 「どうしてそれを!!はい、呼んでいます」  そうですか、よかったで・す・ね。 「それからここにいるのが、執事のセバスクンです」  あぁ、『ちゃん』じゃなくて、『君』なのね。  微妙な小ネタを入れてくるのね…。  疲れそう。 「よろしくお願いいたします。ダリーナ様、ダリダ様、セバスクン様」  私は3人に挨拶をする。  よく考えたら私の見た目は18歳くらい。  ダリーナ様は20代後半だから、あまりにも高飛車だったかしら?
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