2019

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「いつまで続くんだろうね」 朱音はワインを飲み下す。 アルコール成分に反応して、思考が少し緩やかになるよう設定されている。 「何が?」 「2019年がさ」 「そんなのずっとでしょ」 「いつかは破綻するよ」 科学技術も2019年から進歩させてはいけないことになっている。 でも、自分達の思考回路もボディも、それから30年経った技術を使っている。 「この世界は矛盾してるし、  本質から目を背けてるだけだよ。  いずれ全て破綻するよ」 「そうだね」 誰も見ていないテレビ。 バラエティが面白いと言われた時代など、とうに終わっているというのに。 令和という年号に湧いて見せる新聞も、ニュースも、誰も見向きもしない。 「それでも、  死ぬよりはまし」 「大澤…」 大澤毬花は、2021年の冬、感染症に罹り、治療を受けられずに自宅で死ぬのだ。 それよりはまし。 ワインを飲み干す。 「あんまり色々言ってると、  時空警察に通報されて、  代替わりになるよ」 それを言った途端。 朱音は泣きそうな顔になった。 「お前が言うなよ…」
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