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「天野さん、先週箱根行ってきたんでお土産です」
「いえ、結構です」
今日も今日とて課長に会いに来た高梨さん。
しかしやはり一蹴され、ショボンと肩を落とし去って行く。
「高梨さんもよくやるよねえ」
右隣の山内さんがいつものように南さんに声をかけた。
「ね。でもあの人ハンターだから、逃げられると火がつくらしいよ」
「さすが美人は違うね」
山内さんの言うとおり、高梨さんはとても美人だ。
スレンダーな体型、明るめの艶やかな長い髪。
額を出していることでより華やいだハッキリとした目鼻立ち。
やっぱり高梨さんも、課長のことが好きなんだろうか。
……いや、『も』ってなんだ。
邪念を吹き飛ばして、再び仕事に集中する。
たった一回褒められたからって、課長のことを意識するなんて愚かだ。
それが彼にバレたら、きっと気味悪がるだろう。
やっぱり私は、仕事に専念できるだけでいい。
何も期待しないし、何も願わない。
ただ、自分のやるべきことを遂行するのみ!
「……今日も唐田さん気合い入ってるねー」
「仕事好きだなホント」
両隣の彼女達が笑っているのも気にせずに、ひたすらキーボードをマシンのように打ち続けた。
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