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『めちゃくちゃ素敵な人じゃん!そのまま突き進め!』
後ほど敦子から送られてきたメッセージ。
力強い言葉に勇気づけられて、リビングで一人微笑んだ。
課長とは結局夕食を食べただけで、すぐに帰宅。
優しい彼はいつもきっちり家の前まで送ってくれるけど、一度も私の家に入ろうとはしなかった。
誠実な課長の人柄が伝わって嬉しい反面、やっぱり寂しさも感じて。
だからといって「家に寄っていきませんか?」と言えない自分に焦燥感を募らせた。
『あのブルーレイ観た?』
次のメッセージに気づいて、鞄の中に入れっぱなしだったのを思い出した。
『ファイツ!』
戯けたスタンプに再びほくそ笑みながら、ブルーレイディスクをプレイヤーに挿入する。
しかし、その内容と言うのが……
『初めてのラブレッスンマニュアル』
「………………」
見るからに怪しい教材だった。
ハッキリ言って直視するのも恥ずかしいほど赤裸々に、かなりディープな内容で恋人達の愛の育み方について説明されている。
真面目な解説はついているが、実際に再現されている映像もあって、一見するといかがわしいコンテンツと変わりないように感じた。
「…………こ、こんなことを」
あまりの過激な内容にショックを受けつつも、怖いもの見たさで映像を止めることができず、結局テレビの前で正座をして最後まで観てしまった私。
しばらく放心状態で固まりながら、思い浮かべてしまうのは課長の姿ばかりで。
『このままベッドまで運びたいとこだけど』
あれって、そういう意味の言葉だって受け取ってもいいのかな?
課長も、そういう行為を……
ごくりと固唾を呑んだのと同時に鳴り響くスマートフォン。
目をやると、課長からのメッセージが浮かび上がっていた。
『今日はありがとう。楽しかった。庄司さんにも宜しく』
なんて健全なメッセージ。
私が今こんないかがわしいものを観ているなんて、露ほども思わないだろう。
なんだか妙な罪悪感を覚えて、邪念を振り払い返信の言葉を考えた。
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